映像配信サービス「Lemino」が1周年を迎え、よりラインナップが充実。中でも注目は、同サービスでしか見られない独占配信中の邦画ラインナップ。「第47回日本アカデミー賞」で優秀助演男優賞を獲得した菅田将暉の「銀河鉄道の父」をはじめ、賞レースを沸かせた実力派俳優の演技が堪能できる作品が次々と登場している。本記事では、その中から見逃し厳禁の注目作3本を紹介する。
「銀河鉄道の父」菅田将暉が体現する底抜けの童心
唯一無二の詩や物語で、今もなお世界中から愛される宮沢賢治。そんな賢治が「ダメ息子だった!」という大胆な視点から描かれた第158回直木賞受賞作を映画化したのが「銀河鉄道の父」(2022年)。天真らんまんで心のまま生きた賢治と、そんな彼への無償の愛を貫いた宮沢家の人々を描き、賢治役の菅田が前述「日本アカデミー賞」で優秀助演賞を獲得した話題作だ。
全編を通して印象的なのが、子どものように純真な心を持った宮沢賢治のキャラクター。商家の子として生まれながら家業の質屋を「弱い者いじめだ」と拒んで農学校への進学を望んだり、「人造宝石を作りたい。これは絶対に売れます」とおかしな事業に手を出そうとしたり、宗教に傾倒したり…と父・政次郎(役所広司)や周囲を振り回す賢治だが、その根底にはいつも「花巻の人たちみんなを幸せにしたい」という純粋で強い思いがあって、なんとも憎めない。やがて、病を得た妹トシ(森七菜)を励ましたい一心で物語を書き始め、“宮沢賢治”になっていく。
前半の“ダメ息子”と、物語を書く道を見つけてからの賢治がまったく矛盾しない。「ああ、物語を紡ぐ人はこういう純真な人なのだろうな…」そう思わせる、良くも悪くもピュアな賢治を、菅田が活き活きと好演している。本作を含む3本の主演作で「第97回キネマ旬報ベスト・テン」主演男優賞を受賞した名優・役所広司との、父子の感情のぶつかり合いも胸を打つ名作だ。
「やがて海へと届く」浜辺美波が見せる“もう1つの顔”
幻想的な世界観から“実写化不可能”と言われた彩瀬まる氏の同名小説を岸井ゆきの主演で映画化した「やがて海へと届く」(2022年)。現在Leminoで独占配信中の同作で、もう1度見返したくなる奥行きある演技を見せているのが浜辺美波だ。
演じているのは、主人公・真奈(岸井)の親友で、突然消息を絶ってしまう女性・すみれ。自分の殻に閉じこもりがちな真奈は自由奔放なすみれと出会い、親友になる。だが、すみれは1人旅に出たまま行方不明に。それから5年…、すみれのビデオカメラを受け取った真奈は、遺された映像の中に自分が思っていたのとは違うすみれの姿を見る。
本作のテーマは“喪失”と“再生”だ。真奈は、親友だと思っていたすみれが別れも言わず自分のそばから消えてしまった喪失感から立ち直れずにいる。だがビデオカメラの映像の中に映っていたすみれは、明るくポジティブなだけの女性ではなかった。作品の前半で真奈の視点から描かれたシーンが、後半ではすみれの視点からもう1度描かれ、すみれという人物の多面性が鮮やかに浮かび上がってくる。
「真奈から見ると、すみれちゃんは強い人に見えてると思うんですけど実際はそうじゃなくて。隠すのがちょっとうまいけど、本当は等身大の女の子」。メイキングで浜辺自身がそう分析している通り、ほかの誰かから見たすみれと、すみれ自身から見たすみれにはズレがある。そのズレを確かめたくてもう1度最初から見たくなる、そんな作品だ。
神木隆之介主演のNHK連続テレビ小説「らんまん」(2023年)でヒロイン・寿恵子を演じ、神木と再共演した映画「ゴジラ-1.0」では「第47回日本アカデミー賞」優秀主演女優賞を獲得するなど国民的女優に成長しつつある浜辺が、瑞々しくも多面的な演技を見せている。
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