【テレビの開拓者たち / 大古滋久】「ねほりんぱほりん」「昆虫すごいぜ!」プロデューサーが語る番組作りの極意
人形劇というスタイルを取ることで、タブーな話題にも切り込む異色トーク番組「ねほりんぱほりん」(2015年~)。昆虫を愛してやまない香川照之が“カマキリ先生”に扮して昆虫の生態を紹介する「香川照之の昆虫すごいぜ!」(2016年~)。最近はネットで話題となることの多いNHK Eテレの番組だが、その中でもひときわクセのある番組をプロデュースし、ネット界隈を騒がせているのが大古滋久氏だ。これらの番組を、大古氏はいったいどんな思いを込めて制作しているのか。9月1日(金)にNHK総合で一夜限りの復活を果たす「ねほりんぱほりん」の見どころと合わせて、大古氏に直撃インタビューを敢行。そのユニークな番組作りの極意に迫った。
ますだおかだの増田さんから、“あと一歩面白くしよう”という姿勢を教わりました
──大古さんがテレビマンとして初めて携わられた番組は何だったのでしょうか。
「僕は初め、NHK広島放送局にいたんですが、中国地方で放送されていた『ふるさとオンステージ』(1991~1993年NHK広島)という音芸番組が最初ですね。(ステージの)袖から物の出し入れをするという雑用係だったんですが、技術さんも含めてスタッフ全員から罵倒されまくりで、本当にきつかったです。しかも、今同じことをやれと言われても絶対できないくらいの膨大な仕事量で。収録中ずっと気持ち悪い汗をかいていたのを覚えてます」
──その後、東京に異動されて、番組制作に携わっていく中で、印象に残っているお仕事は?
「僕はもともと、ますだおかださんが大好きだったんですが、『金曜かきこみTV』(2003~2008年NHK教育 ※2007~2008年は「土曜かきこみTV」として放送)でお二人とお仕事させていただいて。そこでの、増田(英彦)さんの番組への取り組み方は非常に勉強になりましたね。増田さんは、とにかく“番組をもっと面白くしよう”という気持ちでいっぱいの人なんです。例えばロケをしていても、何かハプニングが起きたときに、僕らスタッフはそこでひと笑いあって終わり、という処理の仕方をしてしまいがちなんですけど、増田さんは、常に2歩くらい先のことを考えながらしゃべっているから、そのハプニングを伏線にして、あとでさらに大きな笑いどころを作るんですよ。そんな姿を見て以来、僕も、収録中に想定外のことが起きたら『これを他の場面で使えないか』というように、“あと一歩面白くしよう”という意識はすごく強くなりましたね。その瞬間で終わらせず、いつも先を考える、という姿勢を学んだような気がします。『ねほりん』をやっているときも、面白いトークが録れたらそこで終わり、というのではなく、人形劇はどんな画にしようかとか、この面白さをさらに盛り上げるにはどうしたらいいのかを毎回突き詰めて考えていました」