【テレビの開拓者たち / 大古滋久】「ねほりんぱほりん」「昆虫すごいぜ!」プロデューサーが語る番組作りの極意
「ねほりんぱほりん」を作って気付いたのは、人の“闇”を描くのって意外と面白いんだな、と(笑)
──昨年レギュラー放送された「ねほりんぱほりん」は、人形劇という体裁を取ることによって、これまでなかなかテレビでは話を聞けなかった“訳あり”な人たちとのトークを成立させ、視聴者のみならずテレビ業界の間でも大きな反響を得ました。この番組はどのような流れで始まったんでしょうか?
「いわゆるテレビ離れ、NHK離れといった風潮が深刻化する中で、われわれとしては、この現状を何とかしなくちゃいけないということで、当時『ネットの人たちにも見てもらえる番組』が課題になっていたんですね。だから最初は、人気ブロガーが出演する番組を考えたんです。そうすれば、ネットで繰り広げられているようなやりとりが展開できるんじゃないかと思って。ところが彼らを取材してみたら、『ネットでは顔が出ないからこそ尖ったことが話せるんだ』と言われてしまって。さてどうしたものかと考えていたときに、藤江(千紘)というディレクターが『じゃあ、人形でも使いましょうか?』と提案してきた。そこから一気に番組の形が出来上がっていった感じですね」
――MCの山里亮太さん、YOUさんの起用理由は?
「山ちゃんは以前、『Rの法則』(2011年~NHK Eテレ)で、名前も顔も公表NGの人にネットを通じてインタビューする『匿名リサーチ』というコーナーを担当してもらったんですが、そのときの仕切り方とか話の掘り下げ方が素晴らしくて。同じく匿名の人に話を聞く『ねほりん』の企画をお任せできるのは、もう山ちゃんしかいないと思ってお願いしました。YOUさんも最高ですよね。やっぱり、ズバズバと本音を言うところが彼女の最大の魅力だと思います。あと、お二人がすごく仲良しだったのも番組にはプラスになったと思いますね。あのお二人は、もちろん恋人という感じではないんですけど、親戚みたいな仲の良さなんですよ(笑)。いとこ同士みたいな」
──「ねほりんぱほりん」がスタートしてから改めて気付いたことや、新しい発見は何かありましたか?
「人の“闇”を描くのって意外と面白いんだな、ということでしょうか(笑)。リサーチの段階で、取材相手からチョロチョロと闇の芽みたいなものを感じたら、『もっと知りたい! もっと掘り下げたい!』と、ふつふつと欲望が湧いてきます(笑)。僕は宮部みゆきさんの小説が好きなんですけど、彼女の書く世界って、登場人物それぞれの行動や生き方の“理由”がきっちりと描かれているじゃないですか。どんなにひどい犯人でも。『ねほりん』では、ああいう描き方をテレビで展開できないか、という思いもあって」
──その「ねほりんぱほりん」が、この秋ついに「夏の終わりの、ねほりんぱほりん」として一夜限りの復活を果たします!
「今回のトークゲストは『ヒモと暮らす女』です。ヒモって、一昔前だと『金がないなら体で稼いでこい!』みたいな、それで自分は毎日パチンコをしてる、みたいな、そんなイメージがありましたよね。でも、僕らがお会いした女性は、外資系のバリバリのキャリアウーマンで。仕事で疲れたときにヒモの男の人がそばにいてくれるだけで癒やされるらしいんですよ。果たして、そんな彼女の幸せはどこに向かおうとしているのか。そのあたりを“根掘り葉掘り”していきます。トークにはヒモの男性にも参加していただいたんですが、どんな人形で再現するのかも注目していただきたいですね(笑)。さらに、人形劇のメイキング映像や、“もう一度あの人に会いたい”ということで『元薬物中毒者』が再登場します」