仲吉玲亜「私は別物として挑みました」山下敦弘監督映画「水深ゼロメートルから」公開記念舞台挨拶にメインキャストと監督が登壇
第44回四国地区高等学校演劇研究大会で「文部科学大臣賞(最優秀賞)」を受賞した中田夢花脚本による徳島市立高等学校の演劇が原作の映画「水深ゼロメートルから」が、2024年5月3日より公開となった。5月4日には新宿シネマカリテにて公開記念舞台挨拶が開催され、主演キャストの濱尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、そして、山下敦弘監督が登壇した。
フレッシュなキャスト陣の感慨深いコメント
同イベントではまず映画が上映され、舞台挨拶が実施。大きな拍手に迎えられて濱尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、山下敦弘監督の5人が順番に登壇する。
ココロ役の濱尾は、「昨日の初日、1人で映画を観に行き、ついに公開したんだなぁという気持ちで胸がいっぱいです」と喜びを噛みしめるようにコメント。ミク役の仲吉は「早速感想をSNSで読んだんですけど、皆さん全然違う感想を書いていて、読むのが楽しかったです。皆さんもぜひ感想を書いていただけたらなと思います」と述べた。
チヅル役の清田は「たくさんの感想を目にして、その一つ一つに個性があり、読んでいてすごく楽しく、映画を届けることの楽しさを改めて実感しています」と思いを語り、ユイ役の花岡は「ズラッと並んだ皆さんのお顔を見るとついに公開したんだなぁと実感してドキドキとワクワクという感じです」と喜びを表す。
山下監督は「本日は見に来てくださりありがとうございます。たくさんお話できればと思います」と改めて感謝を伝えると、本作についてのトークが展開された。最初のテーマは高校生が手がけた原作を元にした高校演劇リブート企画の作品として、2020年に公開となった映画「アルプススタンドのはしの方」に続く形で制作されたことについて。
山下監督は「元々、大好きな中原俊監督の『櫻の園』が演劇作品ということで真っ先に浮かびました。この作品も同じくミニマムなようすを描く作品だなと思いました。そして城定監督の『アルプススタンドのはしの方』の次ということでやりたいな、という気持ちになりました」と真剣に語る一方、「詳しいことはパンフレットに書いてあるので」と笑いを誘う。
次いで、キャスト陣へ話が振られた。質問は舞台からの映画化にあたって“演劇で一度演じた役”を演じることについて、どのような気持ちで臨んだかというもの。濱尾は「2年ぶりのココロ役ということで不安と嬉しい気持ちの両方がありました。撮影に当たっては監督の映画の雰囲気を知るために再度『リンダ リンダ リンダ』『天然コケッコー』を観ていきました」と当時を振り返る。
“2年ぶりのココロ役”という気持ちで挑んだ濱尾に対し、仲吉は「私は別物として挑みました。舞台と映画ではリアリティや熱量が違うので同じミクだけど違う気持ちでした」とコメント。リフレッシュして新しく役作りに励んだという。
そして花岡は「舞台のときは実際に女子高生、映画撮影時は19歳でその時期の2年は大きく感じることが違っていたので、無視しないで取り入れつつ、演じていました」と歳を重ねて自身の受け取り方が変わったと明かした。続いて清田への質問として、“映画からの出演”となった心境が投げかけられる。「初めて会うときは、繋がりができあがっている3人に混ざれるか不安だったが、会ったその日に笑い泣きをするぐらいに打ち解けるのは早かったです」と明かし、4人での出会いを振り返った。
舞台と映画の違い
プールが舞台となっている本作の撮影は、実際にプールのなかでおこなわれている。そのことに質問が及ぶと、山下監督は「撮る前にはワンシチュエーションという不安があったが、実際にはロケーションとして面白さがありました。さらに4人が入ることでより面白さを感じたので、不安はなくなりました」と本作ならではシチュエーションについて語る。
またシチュエーションについて、仲吉は「演劇では狭い範囲での限られたコミュニケーションになっていたが、実際のプールサイドだと距離があり、声が聞こえない、表情が見えにくいといった違いがありつつ、テンション感も落ち着いた自然なものになりました」とその違いについて説明した。
濱尾は「舞台では声を遠くに届かせる意識でしたが、プールの中だと声が響くので、立ち位置ごとにその変化を意識していた」と明かす。演劇と映画の違いを見極め、調整したというのだ。
さらに花岡は「一番は砂が違いました。本物の砂を前にすると、掃除のキリがないことを実感し、苛立つ感情も肌で理解できました」と砂に対する印象についてコメントした。清田は撮影を振り返り、「プールは水が入っている状況しか知らないので、箱としての広さを感じて、裸足で走り回ったりするのは楽しかったし、自分をさらけ出す感じもワクワクして楽しくできました」とこれまでにない経験だったと語っている。
演出面について、山下監督は女性ならではのセンシティブなテーマを扱うということもあり、「頭で理解をしても、女性的な感覚や実際の熱量は4人にも相談しながら、セリフを削ったりとみんなで作りあげていった」と撮影を進めていく様子を振り返った。
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