洋楽サウンズに古畑の歌声…ラジオという空間を巧みに使ったハイセンス回
今回の犯行に使える時間はたか子のトークコーナーが途切れる3分間のみ。ラジオブースを抜け出し、履いていたヒールを脱いで全力の猛ダッシュをするたか子の場面は古畑シリーズの名シーンの一つといえるだろう。たか子自身がラジオで流した軽やかなBGM「サン・トワ・マミー」がかかる中で女の恨みと憎しみに満ちた殺害行為が映し出され、ドラマチックで緊張感に満ちたシーンである。その後、今泉が古畑に何度も走らされるのはとても気の毒だが…。
たか子は、ラジオでケタケタ笑いながら明るく話す姿と、オフの時にけだるそうにスタッフに甘えながら話すときのギャップが魅力的な女性。ウェービーなロングヘアーをいじりながら古畑の話をはぐらかしたり、エリ子を殴打した直後に「痛い?」と話しかけるなど、殺人犯らしからぬマイペースぶりを貫く。
第11話の演出はラジオを使ったBGMがたくさん流れるのがとてもおしゃれだ。エルビス・プレスリー「ハートブレイク・ホテル」やビーチボーイズ「サーファー・ガール」など往年の名曲が流れるうちに、古畑がどんどんたか子を責めていき自白まで追い込んでいく。たか子が犯人である証拠が欲しい古畑が、越路吹雪「ラストダンスは私に」を歌ってテープに吹き込むのだが、その古畑の貴重な歌声が聴けただけでも得したなと思える回である。