両親とは血のつながりがなく、孤立無援状態の村松
実は、村松は両親と血のつながりがなく、跡継ぎとして村松家に迎えられ、育てられてきた。村松もその期待に応えようと勉強を頑張ってきたが、違和感を覚えるようになっていた。
聖子に強引に連れて帰ってこさせられた村松は、「私は麻酔科医の仕事に魅力を感じて」と説明しようとするが、「あなたの意見なんて聞いてない!」と一切話を聞こうとしない。それで思わず、「やっぱりそうなんですね。私を引き取ってくれたのは、ただ跡継ぎのためだったんですね」という言葉をぶつけた。
しかし、聖子から返ってきたのはビンタ。父・誠一郎も村松をかばうことはせず、「お母さんの心はもっと傷ついているぞ。お前は我々家族を裏切ったんだ」と村松を責め立てた。
研修医の時の麻酔科医の言葉で麻酔の大切な役割に気付く
幼なじみの小松(向井康二)の手助けもあって、聖子の制止を振り切り、山小屋診療所にやってきた村松。そこで、宮本に自分のこれまでと本心を打ち明けた。育ててもらったことは感謝していて、期待に応えようと頑張っていたこと。しかし、「親のために私の人生捧げなきゃいけないのかな」「私が本当にやりたいことって何なんだろう」と考えるようになったという。
研修医のころ、村松と同じくらいの年齢の患者がいて、手術を受けることに対して不安に思っていた。「やっぱり怖いです」という患者に、麻酔科医が「大丈夫ですよ。麻酔が聞けば不安に感じることも怖いと感じることも少しずつ和らいでいきますからね」と優しく声をかけた。
術後、その患者が麻酔科医に「先生の言葉があったから安心できました」と感謝の言葉を伝えるのを見て、麻酔の大切な役割だと分かった。それが村松が麻酔科医を目指すきっかけとなった。
落石事故が発生し、MMTに麻酔科医が必要だと分かる
落石事故が発生。カメラマンの長田(谷恭輔)が右足を岩に挟まれ、身動きがとれなくなっていた。事故発生から5時間ほど経過しており、脚の細胞が壊死(えし)し始めている可能性も考えられる。しかも、二次災害を防ぐために、岩の撤去作業は慎重に行わなければいけない状況にある。
命を守る方法は一つしかない。それは右足切断である。苦渋の決断だが、長田は妻と娘からのメッセージを見て、切断を決意。江森(大森南朋)と鮎川(宮澤エマ)も現場に到着し、切断手術が開始。不安でいっぱいの長田に村松は「大丈夫ですよ。麻酔が効けば不安に思うことも怖いと思うことも少しずつ和らいでいきますからね」と声をかけた。
山での処置が終了し、長田がヘリで病院に運ばれていった後、「お前がいてくれて良かったよ。お前の言葉のおかげで患者も安心できた。お前が極限状態の患者の心を守ったんだ」と、MMTに対して厳しい目で見てきた江森が村松に感謝の言葉をかけた。
村松は、MMTに麻酔科医が必要だということ、そして自分自身の居場所を見つけることができたようだ。母・聖子は許してくれなさそうだが、今の村松なら、きちんと向き合い、自分のやりたいことを伝えることができそうな気がする。
◆文=ザテレビジョンドラマ部