武藤将吾氏、本作の執筆でこれまでの“刑事ドラマ”の醍醐味が変革した
――武藤さんにとっての“刑事ドラマ”の醍醐味を教えてください。
武藤:僕の先生にあたる方が、「あぶない刑事」(1986年-1987年、日本テレビ系)シリーズなど数々の刑事ものの脚本を書かれてきた柏原寛司さんで、ずっと師事してきました。僕は「刑事ドラマを書きたくて脚本家になった」といっても過言ではないんです。刑事ドラマは「非現実的な世界を描ける」という思いがあって、ある理由のもとで拳銃やアクションを使えるのを魅力に感じていました。
でも今回、拳銃を発砲するというシーンがあったときに、足立さんとチーフ監督の柳沢さんがすごく引いてしまって…。拳銃を出すと共感できないといわれ、めちゃくちゃショックを受けました。僕が刑事ドラマで醍醐味だと思っていたことが、彼らにとってはリアリティーの無さに直結するという事実に直面してしまったんです。
2話で利己が千寿に銃を向けるシーンは、最初は威嚇で一回撃つ予定だったんですけど、銃を出すだけになり、10年前の千寿が結城真一(平山)に発砲するシーンは10年前だからOKなど、まずその線引きを探っていきました。
多分、今までの僕なら非日常的な世界に最初から引きずりこもうとするんですが、最初の段階でその線引きがあったので、第1話と第2話がオーソドックスに展開できたのは、2人とのディスカッションの賜物だと思います。
最低限のリアリティーを持ち、まず刑事ドラマとして成立させた上で、自分のやりたい世界観を表現する。僕らの世代では、ドラマは非日常の世界を楽しむものだったけど、今の若い世代は「いかに共感を呼ぶか」という価値観で見ている。ドラマに対する見方がシフトチェンジしていることが興味深い。だから若い世代のアイデアにのって、細かく確認しながら今も書いています。
足立遼太朗P、オクラメンバーがひとつの事件に向かうところに胸が熱くなる
――足立プロデューサーにとっての“刑事ドラマ”の醍醐味はいかがですか?
足立:やっぱり、ひとつの事件にみんなが向かっていくところが胸が熱くなり、かっこいいなと思います。今回、武藤さんが「オクラ」という部署を生み出してくださり、“刑事の墓場”といわれていますが結局ヒーローたちのたまり場でもあるというか。ちょっとセットを豪華にし過ぎたというのもあるんですけど、オクラメンバーが部署に揃うシーンが、個人的には大好きです。
オクラメンバーひとりひとりの熱量を感じるし、いろいろなアイデアも出し合ってくださるんです。武藤さんの脚本を、あのオクラメンバーがあの場所で、台本の何倍も何倍も掛け算をしてくれていて、どんどんおもしろくなっていると実感しています。