キム・スヒョンが主演を務める韓流ドラマシリーズ「太陽を抱く月」(Huluにて配信中)。2012年に全20話が放送された大人気ドラマシリーズである同作は、朝鮮王朝の架空の時代に繰り広げられる宮中ラブストーリーを描いた作品だ。第18話ではホ・ヨヌ(ハン・ガイン)の命が奪われる原因となった8年前の真実について、イ・フォン(キム・スヒョン)が底知れない宮廷の闇に苦しむことになる。(以下、ネタバレを含みます)
迷った心へ、8年前の自身の言葉が突き刺さるイ・フォン
記憶を取り戻したホ・ヨヌ、そして彼女と8年の時を経て結ばれた王イ・フォン。夜、眠る際には布団を並べて「一緒に横になるといい気分だな」「はい、そうですね」と2人で心温まる会話を交わしていた。しかし2人の布団と布団の間には、目隠しをしたヒョンソンの姿が…。「ひどくないか?」と訴えるイ・フォンとホ・ヨヌによって最終的には退室したヒョンソンを見送り、2人は改めて8年という長い年月で空いた距離を少しずつ埋めていくのだった。
翌日、イ・フォンのもとにホン・ギュテがやってくる。ホン・ギュテは調査によって、先王ソンジョ(アン・ネサン)が8年前、世子ピンの死に関する調査を終える直前に王女のいた淑英斎(スギョンジェ)に出入りをしていたことを突き止めたという。ソンジョはミナ王女を溺愛していたため普通の行動ではあるのだが、大王大妃(テワンテビ)・ユン氏(キム・ヨンエ)も淑英斎を頻繁に訪れていたというではないか。
驚くイ・フォンに、並行して調べてきた呪術についても報告するホン・ギュテ。呪術の供え物には人が使われることもあり、“願望や執念が強いもの”であれば非常に有効な供え物になるという。イ・フォンのなかで、見聞きしたさまざまな情報が駆け巡っていく。
思い出すのは8年前、先王ソンジョが自分が「申し訳ない」とイ・フォンに突然謝ってきたひと幕だ。「無能なため世子ピンを守れなかった」という言葉に、イ・フォンはホ・ヨヌに向けられたさまざまな冷遇を指しているのかと思っていた。しかし「いずれ意味が分かるだろう」と付け加えられた言葉の意味が、いま繋がろうとしている。しかしソンジョはこうも続けた。「私が――守ろうとした者たちを許せ。そして守るのだ。無理だったらこの私を許さなくていい」「世子、王の座は孤独なのだ。敵は四方八方にいるし、誰もが敵になりうる。不本意ながら敵と妥協することもある。時には肉親の場合もある。だから頼む…肉親であったとしても許してくれ」。
イ・フォンがたどり着いた結論
イ・フォンはある結論にたどり着く。怒りに震えながら立ち上がると、普段政治を執りおこなっている一室へとやってくる。イ・フォンの目には、ソンジョに直訴した過去の光景が映っていた。ホ・ヨヌの兄、ホ・ヨムを守るために取った行動が政治的な交渉材料と見なされ、利用される隙を作ったとソンジョは激しくイ・フォンを叱咤する。
感情を抑えられない者に誰が守れるのかと指摘するソンジョに、イ・フォンが見せたのはかつてないほど激しい反応だ。「何もせず何も変えず何も守ろうとしないで、決められた道理に従い無力かつ無能に、そう生きろとでも?王とは――そんなものですか?」声を荒げるイ・フォンに、ソンジョは「守ろうとすれば傷つくだろう。得ようとすれば失うだろう。それこそが――お前の宿命なのだ。守りたければ悟られるな、何かを得たければ何かを捨てろ。失ってこそ手に入れられるのだ。それが政治だ」と悲しい目で訴えた。
だがイ・フォンはさらに、「結局のところ、父上は何をなさったのですか?一体何を得て何を失ったのですか?」と言葉を重ねる。ソンジョは言葉にはせず、得たもの、失ったものを数えあげた。「忠臣を失い安全を得た。ヤンミョングン(チョン・イル)を失いお前を守った。世子ピンを失い、ミナ王女を守った」。しかし、その真意はイ・フォンには伝わらない。
「私はそんな王にはなりません。正しいと思ったら全力で守ります。すべてが得られても誤りであれば捨てます。私の国は――そうなるでしょう」決然と語ったイ・フォンに言葉を返すことはなく、ソンジョは彼を見送るのだった。
そして現在のイ・フォンと、8年前のイ・フォンが対峙する。「あの決意を忘れたのか?正(チョン)しく置(チ)くことが政治(チョンチ)だと言ったではないか。万物や人を正しい位置に置き、奪われた座を元の者に返すこと。それが君主としてすべきことなのを忘れたのか?」と過去の自分に激しく問われ、イ・フォンはその決断の重さ、責任のつらさに息を詰まらせる。
NHKエンタープライズ