安藤美姫選手らとの感動秘話満載！ “優勝請負人”ニコライ・モロゾフコーチが初の著書を出版
バンクーバーオリンピック・フィギュアスケートの日本代表、安藤美姫選手、織田信成選手のコーチとして知られるニコライ・モロゾフ氏の著書「キス・アンド・クライ」が完成。2月2日の発売に先駆けて1月15日、都内で出版発表・共同記者会見が行われた。
フィギュアスケートの競技で、演技が終わった選手がジャッジの採点を待つ間、コーチと並んで座る場所である「キス・アンド・クライ」をタイトルにした本著は、約2年間に及ぶ長いインタビューをまとめたもの。荒川静香をトリノオリンピックの金メダリストに、安藤選手を'07年世界選手権の金メダリストに、高橋大輔選手を'08年四大陸選手権で優勝させた経験を持ち、“優勝請負人”とも呼ばれるモロゾフ氏が、この3選手を中心に日本人フィギュアスケーターたちの苦闘する姿を内側から生々しく語っている。
会見のために来日したモロゾフ氏は「インタビューなどでは4回転のことに終始してしまうのですが、スケーターの人生やわたしの考えをお伝えするいい媒体になるかと思います。日本の皆さんと分かり合うという意味で、日本語で出版ができてうれしいです」と、集まった多くの記者陣に笑顔でコメント。
本著には、選手とのかかわり方についても記されているが、会見でも「試合で何かうまくいかなかった時は、9割方コーチのミス」と明言したモロゾフ氏は、自身の仕事を外科医に例えて、「心臓手術をした場合、失敗すると命を失う。私たちも同様に、失敗したら選手生命がなくなってしまう。安藤選手が世界選手権で優勝すれば、さらにいい成績を収めなくてはならない。織田選手に悪い成績が出たら人生が変わってしまう…それだけ大きな責任を担うのがコーチ。だからこそ、コーチと選手の間がオープンで、信頼関係が醸成できていないとうまくいかないと思う」と、理想的な関係を築くことの難しさ、自身が思うコーチの責任の重さを説明した。
また、若く才能のある選手が多い日本やアメリカのスケート界の現状に触れ、「スケーターの人生は非常に短く、そこに大きな危険性をはらんでいることも警鐘を鳴らしたい。スケーターの生活は、朝、練習、夜、練習…間に大会やショーがあり、各国に行ってもホテルとバスとロッカールームしか見られず、スケート以外の世界、その国に触れることはありません。（そんな中でも）やはり、本物（のバレエや演劇、音楽など）に触れて、それを見る目というものを養ってほしいと思います。例えば、オリンピックでも世界選手権でも上位7人の男子に注目して見てください。みんな、奇麗なヘアスタイルとメークをしています。多感な年ごろの男の子にメークをさせるということがいかに難しいか、分かっていただけるでしょうか。なぜそこまでしないと勝てないか理解させるためには、演劇などを見せることによって、『役者たちみんなメークしていたね。あんな衣装を着ていたね。あそこまでのことをやるためには、ここまでやらないといけない』という説得の材料になる。納得させるために、そこまでやる必要があるのです」と力説。練習だけでなく、早いうちからいい作品に触れ、感性を磨くことの重要性を熱く語った。
さらに、直前に迫ったバンクーバーオリンピックにおいて、安藤選手と織田選手が金メダルを獲得できる可能性について尋ねられると、「オリンピックでの金メダルというのは、そんなに簡単なものではないとしか答えることができません。荒川さんが金メダルを獲ったので、日本の方は皆さん、また金メダルを考えていらっしゃると思うんですが…このオリンピックに限っては、金メダルは誰に行くかは分かりません。特に男子（シングル）は、非常に優秀なスケーターがそろっている。もちろん信成だって金メダルの可能性はある。ただ、誰にとっても同様に難しいことであるとしか、わたしには言えません。ただ1つ言えるのは、フィギュアスケート全体が今回はすごく面白く、エキサイティングな競技になる、ということです」と結んだ。
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ニコライ・モロゾフ著
発売中 1575円（税込）講談社
