――今までお互いの選曲を聞いて特にこうきたか、と思ったこと曲はありますか?
スージー:紅白って言ってるのに「We Are The World」(笑)。
マキタ:あれは反則技なんですけどね。
スージー:でもほんと「We Are The World」のように今語られない曲を語るっていう、そういうのはコンセプトみたいなのはありますよね。
マキタ:僕は、この収録の何が楽しいかってスージーさんと曲の良さをどう伝えようかってこととかですかね。
あと僕すごく歌詞については弱いんですよ。っていうのはね、最近、ようやく歌詞も聞こえてきたので。僕は若い頃はほとんど歌詞を聞いてないんです。
だからあの歌詞のここがいいとかこのフレーズがいいとか、桑田佳祐さんのユーミンのこの詞がどうしていいのか、っていうことを。歌詞に関してはスージーさんから教えてもらうことの方が多いです。
そしたらそれを興奮して説明してるおじさんを見てるとどんどん俺も興奮してきて(笑)。感動して、すごいおじさんがピュアになってく…。
スージー:浄化されていく…。なかなかね、当時分からなかった…。
マキタ:カセットガールなんて分かる訳ないんですよ! 曲よりも自分の方が偉いんだから! 若いっていうのは!
スージー:そうですね(笑)。今曲に真摯(しんし)に向き合うことができるのは年齢からかも知りません(笑)。
――マキタさんはご著書では歌詞分析もされていますよね。なので「歌詞が苦手」というのはとても意外です。
マキタ:歌詞はね、僕はもっと市場的な素晴らしさ、工業製品としてのキット、部品として使われがちなものとかを集めて、こういうものとかいっぱい使われてるよねっていう。別の側面で、もっと「モノ的な観点」でやってるので。
「言葉の力」みたいなものとかをあえて信じてない状況のままで僕はやってる。
スージー:松本(隆)vs秋元(康)みたいな。80年代前半と後半。
マキタ:お笑いが隆盛したのも80年以降ですから。たけしさんとかああいう人たちが出てくる訳じゃないですか。また85年くらいにとんねるずさんとか出てきて、だいぶ芸能の流れが変わって。批評的だし、すごくぶっ壊す。
そういうのに僕は感化されたんです。お笑いで世の中を変革してくようなイメージとか、もっと軽薄なノリになっていく感じとか…。だからとんねるずが「歌謡曲」っていう曲をもって、今までのムード歌謡とかをからかっているのは構造的にときめきましたね。
スージー:「歌謡曲」(1986年)も「なんてったってアイドル」(1985年)という曲も秋元康が作詞した1985年くらいの曲なんですけど、それ以降はあまり歌詞の一行一行に線を引いて読んだりとか、熟読したりとかをしないっていう。そういうカルチャーがなくなってきたんで。
マキタ:どんどんどんどんそれがなくなっていったし、壊しにかかっているもののほうに乗っかってきているし、詞を見詰めて「はぁ…」みたいなのはカルチャーとしてはなくなっていったんじゃないかな。
スージー:ボクは小指一本そのカルチャーを知っていたっていうね。
――来年以降の企画や今後の番組の方向性を教えてください。
スージー:新春、ですから元春。新春元旦、元春。1月の一発目は佐野元春で。
マキタ:2017年のカセットテープ大賞を受賞した佐野元春さんね。
スージー:本人のコメントは絶対来ないです(笑)。で、二番目はチェッカーズ。外せないですね。
マキタ:今後、まだまだいろいろあると思いますよ。今までの音楽番組とかでやっていない角度とか切り口で、別の角度でやったらこんな聴き方とかがあるんだっていうのをみせたいです。
スージー:まあね、「亀田音楽専門学校」(NHK Eテレで放送されていた音楽プロデューサー・亀田誠治さんによる音楽教養番組)とかよりこっちのが本質的ですよね(笑)。
――視聴者の方に向けてメッセージをお願いします。
マキタ:僕は来年20周年なんですけど、いみじくもこんな番組をできて…。僕のやり方としては音楽というものに笑いという角度をつけて伝えることによって、古いアーティストと新しいアーティストのつながっている面とかズレを提示したいなと。
だからこの番組が始まったことは、自分の中でまた原点みたいなものを築く機会になっています。1月にコットンクラブで「オトネタ」というライブをやりますが、「ザ・カセットテープ・ミュージック」を見てコットンクラブに来てください! そしたらより音楽の楽しさが伝わると思います。
スージー:いろいろな音楽の聴き方をまき散らしていきたいので、ぜひ見ていただければと思います。
毎週金曜夜2:00-2:30
BS12 トゥエルビにて放送
※12月31日(日)夜8:00-8:55に大晦日スペシャルを放送
【HP】https://www.twellv.co.jp/event/cassettetapemusic/