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染谷将太が語る歌麿の思いの行き着く先「蔦重への気持ちを認めることができた」一筋縄ではいかない二人の関係性への思い<大河べらぼう>

2025/12/12 18:00

大河ドラマ「べらぼう」より
大河ドラマ「べらぼう」より(C)NHK

蔦重(横浜流星)とのお芝居はすごく有意義で楽しい時間でした


――現存する歌麿の絵からお芝居のヒントも得たと伺いました。どのようなアプローチだったのでしょうか?

歌麿のお話を頂いた際、まだ台本はなかったので、最初にできることは喜多川歌麿の作品を見ることでした。絵というものは表現ですので、そこには人となりが出るのではないかと。作品を見るたびに想像力を掻き立てられましたし、日本画なので2次元ではありつつも、とても奥行きを感じて。この人は何を考えているのだろう、どういう瞬間を切り取ったのだろうということをすごく想像しました。描かれた人物の感情までも想像させられる作品だったので、歌麿という人は、きっと人の気持ちを自分の中に落とし込むことができる、人を見る才能がある方なのではないかと。人の気持ちを自分の気持ちのように考えられる方というのは、すごく繊細な方なのだろうと想像したことが、歌麿を演じる上での最初の入り口でした。

――その後、台本を読まれていかがでしたか?

最初にイメージしていたものは漠然としたものだったのですが、台本が出来上がりそれを読むと、自分の中で点と点が結ばれていくような感覚になりました。森下先生の描かれる歌麿もすごく繊細ですし、ものすごく複雑な気持ちを抱えた人間として描かれていたので、自分自身が想像していたものと結びつけることができました。

――横浜さん演じる蔦重とのお芝居を通してさらに歌麿像ができあがっていったのでしょうか。

やはり蔦重が歌麿という人の感情を引き出してくれていると思うんです。かき乱しもしますが、蔦重の力で歌麿もどんどん成長していく。現場で(横浜)流星くんとお芝居をする中でずっとそのエネルギーをもらっていましたし、流星くんが演じる蔦重を素直に受け止めるということが、自分の中でもとても大事な作業の一つでした。実際に目を合わせて蔦重とお芝居をしていると、その時々でいろいろな感情が出たり隠れたり…台本や絵からイメージしていたものとは違う何かが引き出され、すごく有意義で楽しい時間でした。

――蔦重との多くのシーンの中で、特に印象的だったところは?

少年・唐丸から自分が演じる唐丸に成長して蔦重と再会するところが印象に残っています。自分の中では「べらぼう」のスタートラインでもあり、歌麿と蔦重との微妙な関係性を描く駆け引きという点で、たくさんの心のひだが隠れているシーンでもありましたので印象深いですね。

――そのシーンを経て、その後の方向性が見えたところもあったのでしょうか。

染谷演じる歌麿としては初めて、生身の蔦重と接したシーンでした。実際に対峙したときに蔦重と歌麿の一筋縄ではいかない距離感や関係性を感じ、その最初の気持ちをずっと大事にしていました。

――ご自身が演じたシーン以外も含め、「べらぼうらしいな」と感じたシーンはありますか?

自分が関わっていたということも大きいのですが、やはり写楽の絵が完成した時は感慨深かったです。絵としての表現としては「べらぼう」の中でも最後になりますので、個人的にも胸が熱くなりましたし、歴史が動いた感じがしました。そのオリジナリティあふれる表現もとても「べらぼう」らしいなと思いました。蔦重たちのたわけに、現代の我々もまだ騙されているのではないかと思うような…そんな面白み、楽しみ方もできると感じています。

“気付かない蔦重”だからこそ魅力的で、それが蔦重なのだと思います


――歌麿はてい(橋本愛)に対してはどのような思いだったと解釈して演じていらっしゃいましたか?

自分の中では、第26回で「品の系図」を作った時からおていさんへの信頼感はあったんです。ですが、蔦重の手前もありますし、それこそ蔦重への思いにずっと蓋をしてきている。そんな中で、写楽を作り上げる際におていさんが歌麿を呼びに来て思いを伝えてくれて。歌麿としては、そこで再び蔦重のところに戻ったことで、蔦重への思い、蔦重との関係が自分の中で完成したんだと思うんです。蔦重とはこういうふうに過ごして、こういうふうに一緒に物を作っていくのがお互いにとって一番いいのかもしれないという、歌麿の答えを自分の中で見つけることができました。蔦重との関係を完結できたからこそ、おていさんに対しても素直になっていけるのではと思います。

――二人の関係性が完結したという点については、どのような思いに至ったのでしょうか。

抽象的でもありますが、歌麿の中にある蔦重への思いは変わらないということを、歌麿自身が認めることができたのだと。その思いに蓋をしていることは自分が苦しいだけですし、だからといってその気持ちを本人にぶつけたとしても、それはそれで傷付くだけで。自分の思いの在り方をどうしたらいいのかと悩み続けてきた歌麿だと思いますが、歌麿の中で、蔦重への気持ちは一生変わらないのだなということを許すことができた。自分でその気持ちを認めることができたという感覚がすごく強かったですね。

蔦重に対する気持ちを自らが肯定することができたことで、吹っ切れたとも思いますし、仕事の上でも家族としても楽しく一緒に過ごせていけたらそれで十分だなという気持ちになれたのではないかなと思います。

――第46回冒頭で、「世の中、好かれたくて役立ちたくて、てめぇを投げ出すやつがいんだよ。そんな尽くし方をしちまう奴がいんだよ!いい加減分かれよ!べらぼうが!」とおていさんのことを蔦重に伝える場面がありましたが、あの言葉は歌麿の気持ちでもあったのでしょうか。

歌麿の気持ちもせりふにのせていましたし、「あんた本当にそういうとこだよ」という(笑)。もう俺が言うしかないなという気持ちでしたね。ですが、言いながらもこの人(蔦重)は変わらないのだろうなという気持ちで言っていたと思います。

――第43回で歌麿が蔦重に「恋をしていたからさ」と告げても蔦重には伝わらないというシーンもありました。染谷さんとしても、何で気付かないのだろうという気持ちだったのでしょうか。

役としてはすごく複雑で辛いのですが、個人的には気付いてしまったら蔦重らしくないなと(笑)。そこに気付かない蔦重、という魅力があると思っていますね。その部分の視座がない蔦重だからこそ魅力的で、それが蔦重なんだなと感じました。そういう鈍感だけれど人情味があるところが、自分はとても好きですね。

大河ドラマ「べらぼう」より
大河ドラマ「べらぼう」より(C)NHK
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