【テレビの開拓者たち / 堤幸彦】「墓場に持っていく作品のテーマ探しに入っています」
バラエティー番組の演出からスタートし、ミュージックビデオなどさまざまなジャンルの作品を作り続けてきた堤幸彦監督が、一躍その名を世に広めたのは「金田一少年の事件簿」(1995年日本テレビ系)であり、さらにその独自の映像作りで評価が確立されたのが「ケイゾク」(1999年TBS系)だった。その「ケイゾク」の流れを汲む「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」(2010年ほかTBS系)シリーズの4年半ぶりとなる最新作「SPECサーガ完結篇『SICK'S 恕乃抄』」が、4月1日(日)より動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信を開始。常に時代の最先端を走り続ける堤監督に、創作の原点や信条、さらに、これからの“テレビの可能性”について聞いた。
「堤が本来やりたかったグルーヴ」をようやくお見せできるかなと
──「SPEC」シリーズの最新作「SPECサーガ完結篇『SICK'S』恕乃抄」が、この春、新たな動画配信サービス「Paravi」で配信開始されます。「ケイゾク」以来の盟友である植田博樹プロデューサーとの最新作になりますね。
「僕が植田さんとの仕事を断るという選択肢はないし、ありがたくお引き受けしました。彼とは歳はだいぶ違いますけど、『ケイゾク』を始めたときに“同志”感を感じて。彼は内部からTBSのドラマを変えたいと思っていて、既視感のないドラマを作りたいという僕の思いと一致して、いろんな作品を作ってきましたからね。植田さんと、ネット配信というまた新たな土俵でともに仕事ができるのは、時代の要請であり、運命なのかなと思っています」
──植田さんは「SPEC」の完結編の制作は、前作の「劇場版 SPEC~結~」(2013年)から10年後、2023年くらいに着手しようと考えてらっしゃったそうですが。
「僕は特に何年後とかは考えず、いつでもいいなという感じでしたね。考えてみれば、『ケイゾク』から数えて19年。その前に、日テレの『金田一少年の事件簿』という作品もありましたが、僕の中ではやはり、『ケイゾク』が、より根の暗い(笑)、自分のドラマ作りの出発点という思いが強くあって。『ケイゾク』の感覚のままで、ずっといろんな作品を作り続けている感覚はありますね」
──今回、テレビとネットの作り方の違いは感じられましたか。
「まずは尺の問題ですよね。テレビの場合、1時間番組だとだいたい90分くらい撮って、その中から削ってテンポ感を出すわけですけど、ネットの場合は、例えば30分の作品のつもりが、1時間撮ってしまっても、『そのまま配信しちゃえ!』というやり方もチョイスできる。『SICK'S』のグルーヴ感は今までにない、毒をはらんだものになるでしょうね。尺の問題も含めて、テレビのルールから自由な環境で作品を作ることで、『植田や堤が本来やりたかったグルーヴはこういうことなのか』というものが、ようやくお見せできるかなと思っています」