【テレビの開拓者たち / 堤幸彦】「墓場に持っていく作品のテーマ探しに入っています」
「恕乃抄」を撮り終えても、まだまだオープニングだなという感じですから
──主演のコンビ、木村文乃さんと松田翔太さんのキャスティングは、堤さんからの提案だったとお聞きしたのですが…。
「いえ、僕ではないんですが、激しく同意!致しました。
文乃さんは、『神の舌を持つ男』(2016年TBS系)で、コメディエンヌとして、生々しいキャラクターを演じてもらって、彼女のイメージをいい意味で大きく崩したんじゃないかと思っていて。彼女はこちらが何を言っても応えてくれるので、こちらもどんどんサディスティックになっていっちゃった、という反省も若干あるんですけど(笑)。映画版(『RANMARU 神の舌を持つ男』2016年)でも、かなり強烈な役をやってもらったんですが、今回はミステリアスで、なおかつ恐いという、また別のキャラクターを作りたいと思っています。『神の舌』よりももっと内面的な部分で不思議な暗さが出ているんじゃないかな。
翔太くんは、映画『イニシエーション・ラブ』(2015年)でご一緒しましたけど、何て言うのかな、“日本の役者”の匂いがしなくて、外国の俳優と仕事してるみたいな感じがするんですよ。何センチか宙に浮いているような、あの飄々とした感じがたまらなく好きですね。CMでやってる桃太郎みたいに、怒ったり怒鳴ったりする印象はないと思うんですが、そんなイメージの翔太くんだからこそ、生々しいことをやればやるほど面白いんじゃないかなと思っています」
──そして、このシリーズと言えば竜雷太さん。野々村係長は死んでしまいましたが、双子の弟という設定を作ってまでも出演していただきたかった、ということですね。
「そうですね、出ていただかないと困っちゃいますよ。作品が締まらないです」
──植田さんは、野々村係長のモデルは堤監督ではないか、とおっしゃっていましたが…。
「いやいやいやいや!(笑) そういう面もあるかもしれないですけど、畏れ多いです」
──今回は、「恕乃抄」=序章ということで、植田さんとしては、「序」「破」「急」と続いて、「急=九」の後は「十」「十一」と続けていきたい、と展望をお話しされていました。
「そんなに?(笑) でも、やりたいですね。『恕乃抄』を撮り終えても、まだまだオープニングだなという感じですから。やっと登場人物の人格の片鱗が見えたくらい。ネット配信の業界では、第1話の冒頭10分でお客さんをしっかりつかまえないとダメだという話を聞いたので、今回は、エンディングを想起させるようなスペクタクルなシーンをアタマに持ってきてるんですよ」