大山は吉之助のことが大好きでしょうがないと思うんです
――吉之助と大山の友情についてはどう思いますか?
前提として、大山は吉之助のことが大好きでしょうがないと思うんです。久しぶりに吉之助の声が聞こえただけで、うれしい思いが生まれたりするぐらいですからね。
そして、寺田屋騒動で仲間を一人亡くしてしまったことで、吉之助には一生のトラウマになるようなものを作り上げてしまったという負い目もできてしまったんではないでしょうか。
大山は、その出来事がずっと心に爪痕を残しているんです。その思いは大切に取っておこうと意識して演じています。
――大山にとってそれだけ“寺田屋騒動”の一件が大きかったんですね。
大山は、もう有馬らを止めることができないということはある程度理解していながらも、なんとか有馬たちを言葉で説得したいと思っていたんではないでしょうか。
“寺田屋騒動”のシーンは、精忠組のつながりもあって、大山は諦めずにみんなを説得していたんです。同士討ちはしたくなかったと思いますよ。でも藩の命令には逆らえないので、相当な切なさや辛さがあったと思います。
――“寺田屋騒動”は、辛いシーンではありますが、殺陣(たて)の見どころでもありましたね。
歴史的に有名な事件ですから、すごい回にしたいと思っていました。時代劇ファンの方々には、見応えのあるシーンになったのかなと思いますね。
今回、殺陣で難しかったのは、自顕流という薩摩に古くからある流派で行わなければいけないという点です。藩によって、いろいろ形が違うんですよ。だから、自顕流の指導をしていただく方と、殺陣師の2人の先生に稽古をつけていただいたんです。
大山は、自顕流の小太刀の達人として有名なんですよね。それを聞いたときには「マジかよ…」と思いましたよ(笑)。
天井が低くて、構えたときに刀が屋根に刺さってしまうこともあり、撮影中にその対応することも大変でした。
寺田屋騒動のシーンでは、仲間同士の斬り合いが生々しく描かれていたと思います。一瞬、斬るのをためらったり、目をつぶって斬るという、ちょっとした仕草を大切にしました。
役の輪郭をとにかく太い線で描くことで、演技の縛りをあんまり作らない
――ドラマ「アンナチュラル」(2018年、TBS系)などにも出演されて、さまざまな役柄を演じていますが、普段、役作りはどのようにされていますか?
(台本を読んで)何を求められているのかなと考えます。例えば、自分の考えた大山の人物像を、演技の仕方の中心にするのではなく、藩士の僕たちがやるべきことや、そのシーンに大切なことを考えるというイメージです。
やるならとことんやろうと思って演じているので、史実にある大山のイメージと違う、と言われることもあると思うんです。でも、役の輪郭をとにかく太い線で描くことで、演技の縛りをあんまり作らないようにしているんです。
あとは、共演者の出方を見ながら、「この(演技の)パターンの人がいない」と思った部分を自分が演じることで、全体のバランスを取るということも意識しています。
――長期間、「西郷どん」で大山を演じてきたことで、人物像が変わってきた部分もあるんでしょうか?
そうですね。場所や相手が変わればお芝居も変わりますし、大山にも多面性が出てきていると思います。
吉之助は、いろんな藩の人と交流するようになったので、ちょっと標準語に近い薩摩ことばを話すようになっているんですよ。それを見ていると大変そうだなと思いますね(笑)。
僕も、位が変わることによって、下の者に対する接し方が変わってきたり、そういう部分は演じていて楽しいです。
ただ、精忠組に戻ると、みんなが肩書を脱ぎ捨てて、同窓会のようになるので、シーンごとに演技のギャップが見られると思います。