大河ドラマ「西郷どん」(NHK総合)が、7月1日(日)に折り返し地点とも言える第25回の放送を迎える。
同放送回では、沖永良部島(おきのえらぶじま)の野ざらしのろうの中で死にかけた吉之助(鈴木亮平)を、土持政照(斎藤嘉樹)が救い出す。またもや吉之助が人の手によって“生かされた”一方で、薩摩(さつま)では、精忠組の海江田武次(信義・高橋光臣)が英国人を斬る「生麦事件」が起こる。そして、英国に屈せず戦うことを決めた薩摩には英国艦隊が迫る。精忠組の中ではお調子者だった海江田が、日本を揺るがす事件を起こしてしまったのだ。
高橋はそんな二面性を見せる海江田をどのように演じたのか。インタビューを行い、役作りについてや、精忠組への思いを聞いた。
海江田武次は、明るい部分が減って影のある人物に変わってきました
――1年間の放送の折り返しまできましたね。高橋さんは「轟轟戦隊ボウケンジャー」(2006年-2007年、テレビ朝日系)で、1年間の撮影を経験していますが、大河ドラマでもその経験は生きていますか?
どうなんですかね? 長いと、演じる人の“人となり”がそのまま作品に投影される気がするんです。それがいい方に行くのか、悪い方に行くのかというのは人それぞれだと思うので、長期間の撮影は、人によって合う、合わないがある気がします。
僕自身としては、あまり演技がうまい人間じゃないと思うので、時間があればあるほど役と重なれる気がして、長い撮影が好きです。だから、本当に短い時間ですべてを物にされる方を見ると悔しいですね。彼らにあって自分にないものを模索しています。
――有村俊斎、そして海江田武次の役作りはどのようにしていきましたか?
最初の方は、精忠組に日本を動かすような若いエネルギーや勢いが欲しかったんです。だから、有村俊斎としては、ちょっと思慮は浅いかもしれないけれど、どんどん前に出ていく、精忠組ではムードメーカーとして、幼なじみの中でも明るく快活に見せるように意識をしていました。
有村について描かれている他の作品を見たときには、陽ではなく陰のイメージがありました。ただ、有村の写真を見たら、すごく笑いじわが多くて、よく笑っていた人だったんだろうなと思ったので、役作りでは笑顔を意識していました。
ただ、精忠組がそれぞれの役職についたことで、今までの精忠組にあった軽妙なやり取りは少なくなってきたように感じます。海江田武次は、明るい部分が減って影のある人物に変わってきました。
――現在の海江田は、どのような人物だと捉えて演じていますか?
吉之助や大久保(一蔵、瑛太)など日本の中心になる人たちと共に過ごしていることで、意図せず重要なポストには就いていきますが、あまり出世を目指していなかった人だったと思います。
ただ、上の役職に就いていく大久保たちの能力への嫉妬はあったと思います。自分が出世できないから嫉妬するのではなく、同じことをして共に過ごしてきたにも関わらず、大久保たちが自分のやりたいことを実現していくという点が腹立たしいんでしょうね。
――郷中の幼なじみが役職についていくことにはやはり嫉妬があったんですね。
単純な嫉妬ですよね。郷中のみんなは島津斉彬(渡辺謙)様という大きな存在を敬愛していたんですが、その弟である久光(青木崇高)が能力もないくせに偉い地位についていることがまず腹立たしかったと思います。
そして、そんな久光に取り入っている大久保のしたたかさに「お前も久光のこと鼻で笑っていたんじゃないの?」と引っかかっていたんではないでしょうか。仲間だからこそ、世を渡っていく術を持っている大久保に対しては怒りもあったと思います。
久光を自分の思うように導いていく大久保の頭の良さが海江田にはないので、尊敬と嫉妬がどちらもあったと思っています。