草なぎ剛「44歳のテーマ」 【連載コラム】
そこにいればいいだけの人に僕はなりたい
そうこうしてるうちに44歳になってました。44歳になって思うこと…まだ1年経ってないんだなと。新しい地図を広げて。にしては、結構いろいろやってるでしょ!みたいな感じに思うときもあるし。やっぱり環境が変わったから、自分の誕生日とか年齢とか考えてるヒマがなかった、ここ半年で。気付いたらもう夏だもんね。
でも、いい感じです。何度も言ってるけど、すごくいい感じ。やることがいろいろ増えていて、それこそバイクに乗ってる姿を見せたりとか、今までみんなが知らなかった自分をどんどん見せていく歳になっているのかなと思った。決まり切ったものではなく、作ってる過程だったり、もしかしたら、それこそリアルという意味で、情けない姿や、もっとダメな部分も…今も充分ダメだけど(笑)、見せていくほうが面白いのかなと。
たとえば演技だったら、次泣けなかったらどうしようとか、次笑えなかったらどうしようと思うから、芝居してる段階で次のことを考えながら芝居してたりするんだよ。次はこれだから今のうちから感情作っていこうと。そのとき自分の気持ちが起きなかったら、お芝居できなくなっちゃうから。
でもそれ、もういいっしょって。全部が全部できるわけじゃないんだけど、そういう“自分の中の準備”はいらない。普通の準備だと聞こえたら、あいつ怠けてるだけだと思われるんだけど、そうじゃなくてね。セリフはちゃんと入れるし、稽古もめちゃくちゃする。だけど、よく言うじゃないですか。「そこにいればいいんだ」みたいなさ。それがなかなかできないんだけど、そこにいればいいだけの人に僕はなりたい。しゃべらなくてもいい。だけど、なんかあるな、みたいな。なんか面白いな、みたいな。そういう人になりたい。
だから、ギターとかバイクとか、そういうものは僕の中で必要不可欠なんです。どこか無意識のうちに、こういうアイテムを求めているんだと思う。結局、ジーンズははかなくてもそこにあるだけでいいし、ギターも置いてあるだけでいい。動かないバイクだってそう。そこにあるだけで成立するものだから。そんな人になるのが僕の、44歳のテーマだと思います。
「草彅剛の『お気楽大好き!』」連載中