助演男優賞は吉田鋼太郎! 主演・田中圭は『今どき、こんな役者いない』【ドラマアカデミー賞】
――最終話の結婚式のシーンでは、春田が泣くのは台本にあったけれど、吉田さんもそのお芝居を受けてウルッとされていたそうですが…。
いいシーンなんですよね。あの“逆「卒業」(主人公が花嫁を結婚式場から奪うシーンが有名な1967年の映画)”みたいな、ね。僕なんかアメリカン・ニューシネマの世代なので、あのシーンが俺たちも出来るんだ!っていうワクワク感もあったんです。だったらすごくいいシーンにしたいなって。あそこは、ずっと部長と牧の間で揺れ動いていた春田の、田中圭との最後の見せ場だったのですが、やっぱり田中圭がすごいですよね。こっちが先輩ですから、「泣けるまで待ってくれ」とは絶対言わないんですよ、あいつは。先輩を待たせるわけにはいかないって、そういう非常に律儀な、体育会系なところがある男で(笑)。自分の中で感情を盛り上げて、俺の顔をグッと見ながら高めていったので、それに感動しましたね。今どきねぇ、こんな役者いないなって思いましたよ。
――第1話で武蔵が春田に告白した場面での吉田さんのお芝居が、最終話、春田から牧への求婚シーンで乗り移ってしまったと田中さんもおっしゃっています。部長からたくさんの愛をもらって、いざ自分が愛を与えるときには部長が出てきた、と。そうやって田中さんのお芝居にも影響を与えられたようで。
あー、それ面白いね。そういう見方もできるわけだ。それは素晴らしいですね…。いや、皆影響し合ってますよ。春田の、田中圭のリアクションはすごいですからね。ああいう(春田のような)人、本当にいるんじゃないかと思ってましたからね。
――2人のきずなも深いあまり、吉田さんのクランクアップ時になぜか田中さんが号泣という事件もありましたね。
そう、びっくりしちゃった(笑)。お前のアップじゃねえだろって。俺のアップなのにって。きずなはもちろん感じましたが、逆に、圭が大変だったんだなぁとも感じましたね。僕としては先輩・後輩関係なしにのめり込んでいたので、それだけ関係が濃密だったんだと思います。「恋」って感情を中心に動いている現場なんで(笑)。僕なんてラブストーリーものに出ることも少ないし、日常生活でもしばらく誰かに恋はしていないし。「恋」って感情は、何かを動かしますよね。そういうことに満ち溢れた現場だったと思います。またこの作品はね、皆恋に真剣なんだけど、そのために誰かをおとす、ということがなかったので、そこは割と皆安心しながら相手を好きになったんじゃないですかね。どうしても誰かを好きになって誰かとうまくいくと、別の誰かが悪者になったりするじゃないですか。そういうのがなかった。武蔵も本当は春田と一緒にいたいんだけれど、でも最後はしょうがねぇ、というところを徳尾さんが見事に書いてらっしゃいましたね。
――武蔵がフラッシュモブを仕掛けて春田にプロポーズするシーンは賛否両論でしたが。
撮影現場で「こんなプロポーズって本当にあるの?」って聞いたら、ホントにあるんですってね、今。それで納得できたのですが、あれじゃ嫌って言えないですものね。ただ、あれは武蔵にとって、俺は失うものはないぞという感じじゃないですか。もちろん、嫌と言えないだろうことは武蔵の中でも分かっているんですよ。でも結局それは、やっぱり牧のところへ行けよっていう布石でもあって。だからあのシーンは、ちょっと悲しいんですよね。そこまで頑張っちゃっているのか、武蔵、と。