「おっさんずラブ」3監督座談会・前編! 田中圭と林遣都は『たぶん本当に付き合ってる(笑)』【ドラマアカデミー賞】
2018年春クールのドラマを対象にした「週刊ザテレビジョン 第97回ドラマアカデミー賞」、監督賞には「おっさんずラブ」を手掛けた瑠東東一郎監督、山本大輔監督、Yuki Saito監督が選出された。
「テンポ、笑わせ方、泣かせ方、すべてがハイレベル」「俳優陣の渾身の演技を余すところなく映像化した」と絶賛された3監督による座談会を開催。監督の立場で出演者それぞれの魅力や裏話を聞いた。
「僕たち3人に割り当てられた回が、それぞれの演出スタイルにハマった」(山本監督)
――山本さんは「おっさんずラブ」を制作したアズバーズのディレクター。瑠東さんはメディアプルポに所属。YukiさんはSDPに所属ですね。それぞれ所属の違う皆さんがこの作品に携わった経緯を教えてください。
瑠東:僕は単発版ドラマで演出を担当し、連続ドラマでも引き続き担当しました。
山本:僕は連ドラから参加しました。瑠東さんとは「民王」(2015年テレビ朝日系)の番外編(auビデオパス「秘書貝原と6人の怪しい客」)で一緒にやったことがあるんです。そのあと「黒い十人の女」(2016年日本テレビ系)、「オトナ高校」(2017年テレビ朝日系)でも組みました。
Yuki:僕がお2人と一緒にやらせてもらうのは初めてでしたね。第1話が瑠東さんで、第2話が山本さん。僕が第3話を演出するときにはもうチームができあがっていたので、新参者としてはすごく緊張しました。
瑠東:「おっさんずラブ」チームは貴島(彩理)Pをはじめ「オトナ高校」のスタッフが多いんですが、その貴島Pが新しくお願いしたのがYukiさん。連ドラになるに当たって新しい風を吹かせてほしいと言って。
Yuki:そう言ってもらえたので「よーし」と闘志が湧きましたね。連ドラとして進化していないとダメだと思ったし、自分が入った意味も作りたかった。それにしても、3人とも演出家としてタイプが違うのに、貴島Pはよく僕たちを起用しましたよね。
山本:それが貴島さんのすごいところだなと。僕たちに割り当てられた回が、それぞれの演出スタイルにうまくハマったと思います。
「圭さんは演技力と人間力で相手の魅力を引き出せる、すごい役者さん」(瑠東監督)
――皆さんが現場で感じたキャストの魅力を教えていただきたいのですが、今回、主演男優賞を獲得した田中圭さんは監督の立場から見てどんな役者さんでしたか?
瑠東:圭さんのすごい所は、芝居をしてる時も、芝居をしていない時も、相手の役者さんに心を開かせ“本物の芝居”を引き出すところ。演技というものは、僕たち監督がいくら努力してもどうにもならない領域…というのがあると思うのですが、圭さんはその域で、相手の演技を魅力的に見せることができる。
Yuki:全てのアクションを拾ってくれる人ですね。だから、一番若かったマロ(栗林歌麻呂)役の金子大地くんを始め、圭さんに対して仕掛ける側も堂々と挑戦できる。それは共演者だけじゃなくスタッフもそうなんですけど。
瑠東:第7話の教会のシーンでは、鋼太郎さんが「春田、行けー!」というときに涙ぐんでいて。圭さんの号泣芝居に、鋼太郎さんもつい動かされ自然と反応していた。あんな大ベテランでも圭さんに感化されて生まれ出るものがある…というのは、役者として圧倒的ですよね。
山本:そもそも春田ってあんなに鈍感でダメなやつなのにみんなに愛される、って不思議な存在じゃないですか。それをあれだけリアリティを持って演じられるのは、圭さんだけ。そこが揺るがなかったからこそ、他のキャストの芝居も引き立てられていったと思います。
瑠東:相手の魅力を引き出せるのはテクニカルな芝居の上手さゆえでもあるし、同時に人間力でもある。そう考えると、本当に他にはいないタイプの役者さんですよね。
「吉田鋼太郎さんはほとんど神。超人の域に達している!」(Yuki監督)
――助演男優賞を獲得した吉田鋼太郎さんの怪演も光りました。台本にないアドリブの芝居も多かったそうですが、監督さんたちはどうコミュニケーションを取っていましたか?
瑠東:あんなに爆発力のある芝居をする役者さんって他にいるのかな。ドライ(段取り)、(カメラ)テスト、本番という3段階で芝居が変わるから、予想がつかない。カメラマンには「とにかく(演技を)撮っておくように」とお願いしていました(笑)。本番直前、何かやるときはカメラマンにウィンクするんですよ。それでカメラマンだけは「何かやる気だな」って分かる(笑)。
山本:特にひとりだけのカットでは、すごいバリエーションを見せてくれます。テストの1回目と2回目ですら違う演技をやるんですよ。ハイテンションと中ぐらいのテンションの両方をやってくれるとか、その上でどちらかを選ぶという感じ。顔の向きなど、こちらがお願いしたことは絶対に守りつつ、それ以外では予想を超えてくるので、本物のプロだなと思いました。
瑠東:想像の上をブーンと超えていくおもしろさ。舞台の人だから、目の前にいる観客の反応を想像しながら演じているような感じを受けました。あと、これは部長役に限らないのですが、脚本の徳尾浩司さんが宛て書きをしてくれていたから、吉田さんにとっても乗りやすいセリフやト書きになっていたんだと思います。
Yuki:キャストの中で鋼太郎さんが一番ベテランなのに、誰よりも現場を楽しんでいる。それを見ているとこちらも楽しくなりました。でも鋼太郎さん、撮影時期このドラマと舞台を並行していらっしゃって、とても多忙で。僕は舞台も見に行きましたが、まさに超人というか演じることを突き詰めた人だと思いました。