平成の深夜ドラマの概念を作り上げた一人
「わからない」ものに接したとき、人は拒絶しがちだ。理解できないものは怖い。不気味だ。だから、自分とは関係ないものとは見て見ぬふりをして、距離をとって遠ざける。
けれど、「わからない」もののほうが本来は刺激的で面白いのだ。その証明が山田孝之である。
山田孝之ほど、わけのわからない俳優は珍しい。
2003年、「WATER BOYS」(フジテレビ系)でドラマ初主演を果たしたころは、その後、「FIRE BOYS 〜め組の大吾〜」(2004年フジテレビ系)、「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年TBS系)、「H2〜君といた日々」(2005年TBS系)と続いたように“爽やかイケメン俳優”枠だった。だが、2005年、映画「電車男」に主演し、オタク男性役を好演。さらに2007年には映画「クローズZERO」でワイルドなヤンキー役と役柄の幅を広げ、爽やかイケメンとは相反する濃い無精髭がトレードマークのようになっていった。その後もメジャー作品に出続ける一方で、単館系の映画などにも、主演・助演関係なく出演。特にテレビドラマでは、深夜ドラマに主戦場を移した。彼が最初に出演した深夜ドラマは「闇金ウシジマくん」シリーズ(2010年~2016年TBSほか)。無口で冷酷無比な闇金融の経営者を威圧感たっぷりに演じ、テレビドラマとしてはコンプライアンスギリギリな表現をしながらも、Season3まで放送。映画化もされた。そして2011年、いよいよ山田がテレ東の深夜ドラマに登場する。それが「ドラゴンクエスト」などのRPGをパロディにした「勇者ヨシヒコ」シリーズ(2011年~2016年)だ。こちらも今のところ3期まで放送されている人気シリーズ。山田は生真面目な「勇者」ヨシヒコ役。その生真面目さが突き抜けていて、空気が読めなず、抜けていて、周りを振り回す。飯塚健と組んだ「荒川アンダー ザ ブリッジ」(2011年TBS)では、顔が星型という「星」役! 同じ飯塚監督作品では「REPLAY & DESTROY」(2015年TBSほか)で主演。この作品では「企画」に名を連ね、キャスティングオーディションの審査にも参加するなど、裏方としても力を発揮した。
◆てれびのスキマ◆1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌「週刊文春」「週刊SPA!」「TV Bros.」やWEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載多数。著書に『1989年のテレビっ子』『タモリ学』『笑福亭鶴瓶論』『コントに捧げた内村光良の怒り』など。新著に『全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方』