![第2回では、四三が熊本で過ごした少年時代が描かれた](https://thetv.jp/i/nw/176195/1041089.jpg?w=1284)
書いているうちにどんどん増えちゃって…(笑)
――劇中の音楽はどのようなプランで作っていったんですか?
全体の音楽は、実はもう158曲くらい録音しています。
最初、監督のオーダーでは68曲だったんですけど、書いているうちにどんどん増えちゃって…(笑)。とはいえ、金栗さんが主人公になる前半分しかまだ分からないので、全体像は見えていません。
僕、曲を書くのが早いんです。すごい勢いで書き飛ばしている譜面をもとに、現場でミュージシャンたちとしゃべりながら即興混じりで膨らませていく感じなので、譜面自体は早いけど、現場では結構手間をかけてますよ。そのあたりが、従来とは違う劇伴になっているのかなと思います。
――音楽を作る中で、インスピレーションを受けた風景や場所はありますか?
2017年の夏ごろに、金栗さんの生家がある熊本に行ったんです。予想以上に山の中で、緑が勢いがすごくて「東南アジアみたいだな」と思いました。
“田舎の風景”っていうと、ついついのどかな音楽をイメージしがちですけど、「全然のどかじゃなくて、ワイルドに作ろう」と思ったんです。100年前の金栗さんの家の周りは、きっともっと緑が多かっただろうから、相当“ワイルド”な感じで作ってもいいんじゃないかなという印象を受けました。
それから都内を歩きました。いろいろ資料を読んだ上で、金栗さんが行った学校とか、古今亭志ん生がいた辺りとか巡って。「昔はここがこれだったんだ」とかが分かって楽しかったんですけど、東京にはあんまり痕跡がなかったですね。なので、写真や現場の地形からイメージを膨らませていきました。
今回キーワードになっているのは“痛快”ですね。演出の井上剛さんが、「痛快にいきたい!」って何度も言ってきたんです。井上さんと話していると、「痛快ね痛快。痛快痛快痛快」って5回くらい言ってきて、それに僕が「分かった、分かった、分かった…」って返しながら、進めていく感じかな(笑)。
あと、僕は世界中いろんなところに行っているのが強みなので、今回はそのストックをいっぱい使えるぞって思いました。
制作当時、ちょうど中南米を1カ月半旅していたので、その要素はすごく入ってます。中南米って基本的に巨大な人数でアンサンブルするところが多くて面白いんですよ。特にブラジルは、何百人規模で演奏する。実際にそれを見て、本当に「痛快」って思いました。
ブラジルの今のサンバは、ちょっとアスリートっぽくて、ものすごく筋肉質で音量も大きくて速い。それが、今のオリンピックに近いなって思ったんです。でも、このドラマで扱うオリンピックとはちょっと違うなと。それに、今回のドラマは、オリンピックに出るアスリートだけじゃなくて、飲んだくれて博打売ったりしてる、ダメな志ん生の話も並走している。だから、その両方の要素が入れるように作りました。
南米に行ったときに、そのことがすごく鮮やかに見えてきましたね。
――オープニングは「大きな規模の音楽」などのテーマがありましたが、劇伴はどんな音楽になっているのでしょうか。
やっぱり山のように人がいますよ(笑)。
「大友良英 スペシャル ビッグバンド」のメンバーと、僕が長年一緒にやっている打楽器奏者の芳垣安洋さんがやっている「Orquesta Nudge! Nudge!」というグループ、そしてN響の三本柱で録音していきましたね。N響のアレンジには、江藤直子さんに活躍してもらってます。それ以外にも、和楽器の三味線、和太鼓、鼓の方々も来てもらいました。
あと、もう一つ変わっているとこでは、ブラジルでいっぱい録音してきた打楽器奏者たちの音源もあるので、それもずいぶんと散りばめてます。
中南米に行ったときに仲良くなったアルゼンチンのトップパーカッション奏者のサンチャゴ・バスケスにも日本に来てもらって、一緒に即興演奏したトラックもいっぱい使われてますよ。
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