<試写室>「特捜9」井ノ原快彦&寺尾聰の師弟関係にほっこり
新たなペアが生み出す化学反応
高さが60メートルを超えるか、20階を超える住居用建築物のことを一般的に“タワーマンション”と呼ぶらしい。最近では大人気YouTuberのHIKAKINが、「なぜタワマンに住むのか」という理由を明かし話題になっていた。SF作家のJ・G・バラードによる長編小説を映像化した映画「ハイ・ライズ」(2016年)では、上層階に行くにつれ住民が富裕層になっていく“40階建ての高層マンション”で巻き起こる、現代社会におけるヒエラルキーの崩壊が描かれていた。それは時に富の象徴であり、市民の憧れであり、はたまた強固なセキュリティーを兼ね備えた“鉄壁の城”でもあるだろう。
それが今回の事件の舞台だ。タワマンを仕事場にしているシナリオライターとその妻が、1カ月におよぶ沖縄旅行から帰って来ると、自室に“見ず知らずの死体”があるというからさあ大変。果たしてそこにはどんな人間ドラマが隠されているのか。
これまで、直樹(井ノ原快彦)と新藤(山田裕貴)、志保(羽田美智子)と村瀬(津田寛治)、青柳(吹越満)と矢沢(田口浩正)と、定番のコンビで捜査をしていた特捜班は、今作からは状況に応じてペアを入れ替えながら捜査に臨んでいる。
今回もまた新鮮なペアが見られた。直樹&志保、村瀬&青柳、新藤&矢沢らが、おのおの事件を多角的に捜査していく。矢沢が新藤に、「ちょっと歩くの早いよ!」と指摘したかと思うと、そんな新藤は青柳&村瀬のコンビを見て、「あのコンビで大丈夫ですか…?」と不安を募らせる。
そんな凸凹コンビたちも、主任である直樹に絶大な信頼を寄せるからこそ、新たなペアとの化学反応を見せながら次第に事件の真相にたどり着く。それぞれのコンビネーションもさることがなら、直樹が着実に特捜班の主任として成長していく様を、演じる井ノ原がわずかな表情の変化で表現していることにも驚きだ。笑い方や声の大きさ、立ち居振る舞いが徐々に“主任然”としたものになっている。
そして、そんな井ノ原を優しく見守る寺尾。「特捜9」が放送休止だった5月22日から5夜連続で放送された「白い巨塔」では、それはもう大変悪そうな目つきをして苦々しく笑っていた寺尾は、特捜班の面々を静かに、そしてしっかりと裏で支えている。
「どんなに小さくても、可能性があればすくっていく、それが特捜班」と意気込む直樹。その一方で「浅輪(直樹)さんに任せておけば大丈夫」と口にする宗方。そんな2人のやり取りは、見ていて安心する。
また、死体の第一発見者でもあるシナリオライターの皆川が手掛けたという作品が合間合間に登場するのだが、このタイトルにはクスっと笑ってしまった。パッケージまでしっかりと作りこまれていたのはさすがだ。
そんな小ネタもふんだんに散りばめられた今回の「特捜9」、二転三転とあらすじにもある通り、最後まで気が抜けない。