挑み続ける福士蒼汰は“イケメン俳優枠”でくくられる存在ではない<ザテレビジョン シネマ部コラム>
同じく、力の入った剣戟(けんげき)でド派手なバトルを楽しませてくれるのが『BLEACH』(‘18)。週刊少年ジャンプに連載された大ベストセラー漫画の実写化で、福士がほぼノースタントで演じ切ったのは主人公の高校生、黒崎一護。彼は死神と名乗る少女ルキア(杉咲花)によって力を与えられ、虚(ホロウ)と呼ばれる悪霊との壮絶な戦いに挑むことになる。福士が髪をオレンジに染めて一護に成り切り、ばかデカい斬魄刀(ざんぱくとう)を振り回すアクション・シーンは気迫十分。その一方で、家族やルキアとの絆も丁寧に描かれたストーリーをエモーショナルに演じている。
そして、今までになかった福士が観られるのが東野圭吾原作のミステリー『ラプラスの魔女』(‘18)。演じるのは、物語の鍵を握る謎めいた青年、甘粕謙人役だ。謙人は、櫻井翔演じる主人公の大学教授が追う奇妙な事件において、極めて重要な役割を果たす。思わぬ展開の中で謙人からにじむ優しさと怒り、悲しみ。『神さまの言うとおり』(‘14)、『無限の住人』でも組んだ三池崇史監督のもと、さまざまな表情を見せる福士は、もはや、単なる“イケメン俳優枠”でくくられる存在ではない。
5月30日に26歳の誕生日を迎えた福士。恵まれた容姿と抜群の運動神経を持ち、英語が得意なことでも知られる彼は、あるTV番組では海外での活動も夢見ているとコメントしていた。30代に向かって、俳優として新たなフィールドを模索し現在進行形で進化しつつある福士蒼汰を今、改めて真っすぐに観てみてはどうだろう。
文=前田かおり
映画、海外ドラマ・ライター。「日経エンタテインメント!」「DVD&動画配信でーた」「SCREEN」ほか情報誌、WEBなどで執筆中。