棚橋弘至、安田顕のあの作品も! 映画アドバイザー・ミヤザキタケルが厳選した9月初放送映画3作品<ザテレビジョンシネマ部>
映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。
今月は、己自身と向き合うキッカケを与えてくれる3本を紹介します。
『1987、ある闘いの真実』(2017)
1987年に起きた学生運動家の拷問致死事件から6月民主抗争へ至る韓国の民主化闘争を綴った実話ベースの物語。キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソル・ギョングら韓国の実力派俳優が集結した群像劇で、政府の不正や数多の理不尽にさらされる遺族や検事、記者、学生たちの姿を通し、今この時代を生きる者にこそ必要な勇気の姿勢を描いた作品です。
他国の歴史ゆえに、この悲惨で痛ましい事件を認識していない人もいるだろう。1986年生まれの僕は、恥ずかしながら知らなかった。学生時代に習ったのかもしれないが、とうの昔に忘れていた。飛行機でほんの数時間もあれば訪れることのできる隣国の歴史。他人事だと割り切るのはたやすいが、この忌むべき出来事を、懸命に戦った人々の勇気を、知っておいて損はないはずだ。
僕たちもかつての時代を生きた人たちも皆同じ人間。理不尽な状況を強いられる側にも強いる側にも立ててしまう。今を生きる僕たちの方が優れた人類だなんてことはまず絶対にあり得ない。違いがあるとすれば、僕たちの方がより多くを糧にできるということ。善き歴史も悪しき歴史もすべて引っくるめて今を生き、模範解答を手にしている状態だと言ってもいい。言い換えれば、模範解答を手にしている以上、過去と同じミスは許されない。時代が進み、正しく歴史を語り継げる者が潰えれば、やがてまた同じ過ちを繰り返す。そんなことがあってはならないから、戒めとなり得る本作は価値がある。理不尽に抗う人間を、時に理不尽に屈してしまう人間を、そんな人間の醜さも美しさをも描いているこの作品は、“今”と向き合うためのキッカケを僕たちに与えてくれる。