ドスンと構えているべきなんでしょうけど、いかんせん隣には…
――緒方を演じる上で、参考になったエピソードなどはありますか?
最初にいろんな資料をいただいたので読んでみたんですが、緒方さんはのちにすごく立派な政治家になる人なんですよね。
だから、本来だったらドスンと構えているべきなんでしょうけど、いかんせん隣には田畑がいるので…。低い声で「いいかい田畑くん」みたいなせりふ回しをしていると噛み合わない。
だから、威厳を出すことは忘れて、ちょっとしたボケも入れるようにしようと思いました。
普段偉い人がしないようなボケも入れているので、のちに緒方さんが偉い人になることはもう忘れるようにしています。
――コミカルなシーンと言えば、バー「ローズ」でのマリー(薬師丸ひろ子)と、田畑と3人のシーンですね。
そうですね。バーでのシーンは、いつか緒方さんが副総理くらいまで偉い人になるんだってことを完全に忘れないとできないんです(笑)。
バーに行けば行くほど、田畑寄りのペースに緒方さんが乗り出しているって感じがします。
――バーの撮影現場は、どんな雰囲気ですか?
すごくいい雰囲気です。薬師丸さんは穏やかで素敵な方ですし、あんなに健やかな方は他にいないですよ。
バーの最初のシーンから、阿部さんが薬師丸さんに「ババァ」言ってて…さすがにちょっと、僕から言わなきゃと思って、阿部さんに「よくそんなひどいことを薬師丸さんに言えますね」って言っちゃいましたよ。
そしたら阿部さん、「だって台本に書いてあるんだもん!」って弁解してました(笑)。
バーのシーンは、毎回好きですね。
飲み屋特有のふざけてる感じがあって、新聞社にいるときより気持ちが楽なんです。だから緒方さんもバーに通っているんだろうなと思いました。緊張感なくできています。
――新聞社のシーンはどんな雰囲気なんですか?
おっさんのガヤが多いんですよ! いつもみんなで言ってるんですけど、新聞社のシーンの撮影が終わると、のどが痛くなるんです。
みんなの声がでかいから、気づかないうちにみんな声大きくなっちゃうんです(笑)。
――そんなにも声を張ってるんですね。今回の役を演じてみて、昭和期の新聞社に対するイメージはどんなものになりましたか?
今の新聞記者の方々はエリートだと思いますけど、この物語で描かれるころの新聞記者は、“輩(やから)”感が強かったんだなと台本を読んで思いました。「嫁に出しちゃいけない」と言われていたくらいですし。コンプライアンスという感覚がないままメディアをやっているわけですからね。