二・二六事件の一報が新聞社に入るところを撮影は、やっぱりすごく重く感じました
――歴史的な出来事の渦中にいる人物を演じてられて、どのように感じましたか?
ちょうど平成から令和に元号が変わる時期に、新聞が元号をスクープする話が出てきた。このドラマの企画は3年ほど前からスタートしたそうですから、時期を狙って書いたわけじゃないだろうに、すごいなと思いましたね。自分もそのタイミングに居合わせることができてよかったです。
今回の大河は近代が舞台なので、歴史的な事件や出来事が身近に感じられるような気がします。戦国時代とかの遠い昔の話だったら、血生臭くなくエンタメとして見られるかもしれないけど、戦(いくさ)ではなく、戦争の恐ろしさがある。
どんどん戦争に向かって暗くなっていく国の中で、スポーツで娯楽を作った田畑という存在は大きかったんじゃないかなと思いますね。
僕、「サッカーは戦争だ」みたいな例えをするのが、聞いてて気持ちよくないなと思ってたんです。スポーツ観戦は好きなんですけど、国対国の戦いというまとめ方にされてしまうと、興味が持てなくなってしまう。オリンピックもそうで、国対国の代理戦争ではなく、本当は個人対個人の戦いなんですよね。
第26回(7月7日放送)の人見絹枝(菅原小春)さんのお話は、本当に感動的でしたね。女性がオリンピックに出られない時代から、差別や偏見を受けながら勝ち取っていく。
そういう人たちが頑張ったおかげで、今の時代の自分たちが自由にできていると分かるのはいいことだと思いますね。それに、1000年前の遠い昔のお話とかじゃなくて、ついこの間までの日本のことですから。
改元や戦争などいろんなことがあった中で、1964年の東京オリンピックにたどり着いたんだなってことに、僕自身もすごく興味がわきましたね。
――9月8日(日)放送の第34回では、二・二六事件も描かれます。
先ほどもお話しましたが、戦国時代の戦(いくさ)で、野原で人が斬り合っているよりも、戒厳令が出る描写のほうが人は重い気分になるんだなと思いましたね。
二・二六事件の一報が新聞社に入るところの撮影は、やっぱりすごく重く感じました。新聞社に押しかけてきた青年将校に立ち向かうシーンは、イメージの中では、相当かっこよくなる予定だったんですけど、台本読んだらさほどかっこよくなく(笑)。
所作を居合道の方に習ったりしたので、立ち向かうところはかっこいいんです。けど、そういう深刻なシーンにもちょっとユーモアが入っている感じが、宮藤官九郎さんっぽいリアリティーだなって思いました。
だって肉親が死んでも、その日の夜にみんなで寿司を食べて笑ったりするわけで。そういうふうにどんなに悲しいことがあっても、人はしかめ面ばっかりしてるわけじゃなくて、笑ったりもするんだっていうのがリアルなんですよね。
――宮藤官九郎さんの脚本の魅力はどんなところだと思いますか?
宮藤さん自身がすごく真面目であり、真剣にふざけられる人なんです。
(本作の制作統括・)訓覇(圭)さんと宮藤さんは、(連続テレビ小説)「あまちゃん」(2013年)をやっているから、「ここまでふざけても大丈夫だな?」という下地ができていて、その上で今回の脚本を作っているので、歴史をどう面白くするかっていうのが練られていますよね。
また阿部さんや(皆川)猿時さんが出演しているからか、第2部になってからはさらに水を得た魚のよう。
演出陣もちょっと現代っぽい言い回しになっても、現場のグルーブ感を優先しているように感じます。
――最後に、今回の大河でオリンピックに対する印象はどうなりましたか?
大河ドラマでオリンピックをやるのって相当ナイスな企画だなって思いました。
僕はあんまり時代劇を見ないので、「こういう大河が見たかった!」と思ってます。
それに、ちょうど東京オリンピックというお祭りの前夜祭として、すごくいい予備知識になりますよね。
あと僕、イラストレーターの仕事の中で、一番の“あがり”はオリンピックのキャラクターを描くことだと思ってたんです。
だから、今回の東京オリンピックのキャラクターは絶対に応募しようと思ってたんですけど、気づいたら締切が過ぎていて…決まったキャラクターはもう悔しいから見ないようにしてます(笑)。