空族・富田克也&相澤虎之助が「活弁シネマ倶楽部」で最新作『典座-TENZO-』を語る!
僧侶がカンヌ国際映画祭にこだわった驚きの理由とは
そこまで倉島がカンヌ国際映画祭にこだわっていた理由について、富田は「良いエピソードがあるんですよ」と倉島から聞いた話を語り出す。
「倉島さんが、お坊さんになるための修行を(曹洞宗の)本山の永平寺でしていた頃、思いを寄せていた女性が余命を宣告されてしまったことがあって。
倉島さんがその女性にいろいろ問いかけられるんですけど何も答えられず、そんな自分を不甲斐なく思って『このまま僧侶になっちゃいけない』と考えて、修行を続けるために南仏にあった禅寺に行くことに決めたんです。
そこでいろんな奇跡的なことが起きるんですけど、そんな中で、彼は映画も好きだったからカンヌ国際映画祭にたどり着いて。その時に『いつか俺はここに帰って来るんだ』って心に決めたらしいんです。
そんな20代前半で抱いた思いを、こういう形を成就させたことになるんです。僕たちはそれを知らなかったんです。カンヌでインタビューで倉島さんがいきなり話し始めて。最初から言えばいいのに(笑)」と、倉島が抱いていた本作への思いを明かした。
「青山老師に一発で魅了されちゃったんです」(富田)
脚本について話が及ぶと、「脚本を書き始めるのがわりと遅くて。まずは曹洞宗のことを知らなきゃいけないと思ったし、そもそも青年会の皆さんと関係を深めていく時間も必要だったので。
最初のオファーから丸2年ぐらい時間があったから、僕もわりと余裕があって、永平寺に泊まらせてもらって座禅を組んでみたり。そんな中で、青年会の皆さんと『どんな映画にしましょうね』なんて話をしていた時に、『曹洞宗のことを知るためには曹洞宗一の人格者に会っちゃうのが一番早いんじゃないか』と思って。
青年会の皆さんに『そんな人いますか?』って聞いたら、青山俊董老師の名前が挙がったので、会いに行こうと。ただ会いに行くのも何なので、弟子が師匠に問いかける禅問答の形を借りることにして、それを撮影したんです。
ノンストップの2時間半に及ぶ対話だったんですけど、一番初めに撮影したのがそのシーンでした。その時点ではまだ(相澤)虎ちゃんも関わっていなくて、脚本という形にはなってませんでした」と、映画としての形が決まる前に撮影をスタートさせたことを明かした。
青山老師について、富田は「一発で老師に心を奪われた。魅了されちゃったんですよね。こんな人間いるのかと思って。こんな人がいるならこの世はまんざら捨てたもんじゃないなと思うくらいでした。
僕たちはそれを捉えることができて、後で映像を見返した時に『これは行ったな』と思って。そこでこの映画に対する確信を得ました」と、その出会いが作品作りに大きな影響を与えたことを熱弁。
その上で「弟子の思いの部分である、普段の彼らの生活をフィクションパートとして、ドキュメンタリー部分である老師との対話の両脇に配置するというイメージが思い浮かびました」と、本作の構造に関してコメントした。
富田克也監督と相澤虎之助が語る!! 活弁シネマ倶楽部#52
■映画『典座-TENZO-』
公開中
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