<手塚眞>稲垣吾郎&二階堂ふみ、全裸に躊躇なかった…手塚治虫氏の誕生日にワールドプレミア
手塚眞監督「とても美しいラブストーリー」
一方、スムーズに決まったのは撮影監督のクリストファー・ドイル。「東京が舞台の物語ですが、少し異国のような、この世とは違う景色が見たかったということ。また、重要な要素である街並みを美しく撮れる人であること。
そして、原作はいろいろな要素が入っているけど、シンプルに考えればとても美しいラブストーリーです。だから、何より男と女を美しく撮れる人であること。しかも日本のことをよく知っている…ドイルさんはまさに適任でした」と起用の理由を語った。
さらに「影の理由として、彼はプライベートではお酒が大好きで、美しい女性が好きだと聞いていました。だからこの“酔っ払いのミューズ”の物語を、とても喜んでくれるんではないかと思って、脚本が上がったらすぐに英訳して送りました。
すぐに返事が来て、『ぜひやりたい。これは自分が撮るべき映画だ、撮らなければならない』とまで言って、実際に撮影が動き出すまで5年も待ってくれました。初めて会ったときには脚本にメモをびっしり、厚みが2倍に膨れ上がるほど情熱を持って臨んでくれました。彼と仕事ができて幸せです」と付け加えた。
数ある父の作品からあえて「ばるぼら」を選んだ理由を問われ、穏やかな表情で「皆さん、『火の鳥』や『鉄腕アトム』を映画化することを想像してみてください。…ハリウッド大作の予算規模じゃないと無理です」と答えたり、時代設定について「いろいろ考えた末に現代にしました。原作通り1970年代にするとノスタルジックな香りが強く出てしまうということと、当時の新宿を完璧に再現しようと思うと、ものすごいバジェット(予算)になってしまうからです」と答えたり、限られた時間と予算のとがったインディーズ映画を作ってきた監督ならではのユーモアを見せた手塚監督。
それでもクリストファー・ドイルを起用した理由について「僕はこう考えたんです。彼は主演俳優の1人だと。稲垣さん、二階堂さん、そしてこの映像の演技によってこの世界は作られるのだと。そして、実際そのとおりになりました。もしかしたら一番ギャラの高い主演俳優だったかもしれません」と監督。
続けて「エロティックをネガティブに受け取る方もいますが、私にとっては人間同士の触れ合いなんです。今はすべてがデジタルで、出会いも機会を通してなされる時代だからこそ、直接肌を触れ合わせる、肉体の交流をあえて作る必要があるのではないかと考えました。普通の映画より肉体の交流が多いとは思います」とテーマについて語った。
最後に父の手塚治虫氏がこの作品を見たら何というか問われ「まず、彼が生きているときに『この作品を映画化したい』と許諾を得ようとすれば、必ず『僕も一緒にやる!』と言うと思います。
そして、自分で脚本を書きたがったと思います。そうすると、原作とは全く関係ない全く別の漫画になったと思います」と整然と穏やかに回答。
「そして、もし手伝わずにこの作品を見たら、きっと『俺だったらもっと面白くしたぞ』と言うと思います。大変負けず嫌いの人間です(笑)」と締めくくった。
映画「ばるぼら」は2020年全国公開。
取材・文・撮影=坂戸希和美
2020年全国公開
(C)Barbara Film Committee
■『ばるぼら』予告編 | Tezuka's Barbara - Trailer HD