「みんな木村拓哉さんを目指さないとダメだよね」―スピードワゴン小沢一敬が映画「マスカレード・ホテル」を語る<ザテレビジョンシネマ部>
──そんな今回の作品の中で、小沢さんがシビれた名セリフは?
小沢「ゴミ掃除と同じで、誰かがやらなきゃきれいにならないんですよ」
──連続殺人事件を解明するためにホテルに潜入するエリート刑事、新田浩介(木村拓哉)と、彼の教育係を任されたホテルマン、山岸尚美(長澤まさみ)。お互いの立場の違いから幾度となく衝突してきた尚美に対して、新田が「自分が警察官を目指した理由」を熱く語る場面のセリフですね。
小沢「このセリフを聞いて、仕事とは何だろう? と思わされたんだよね」
──それは、どういう意味で?
小沢「これは極論なんだけど、人間が生きていく上で必要な仕事って、3つしかないと思うのね。衣、食、住。つまり服を作る人と、家を作る人と、食べ物を作る人。でも、より良い社会生活を成立させるためには、さらに警察官とか、消防士とか、医者とか、政治家とかっていう仕事も必要になってくる。そういう中で、俺たちの仕事って何だろう?って考えたの」
──そこの枠には入らない仕事ですよね、確かに。
小沢「そう。生きてく上で必要な仕事でもないし、より良い社会生活のために必要な仕事でもない。じゃあ、何かっていうと、多分、俺たちの仕事って、みんなの人生に差し色をするというか、それぞれの人生というデッサンにちょっとしたアクセントの色をつけるような仕事じゃないかな、と思ったんだよ」
──なるほど。またもやバズりそうな、ステキな話です。
小沢「生きてく上では必要じゃないけど、あった方がみんなが楽しく生きていける仕事。必要じゃないけど必要な仕事。そういう仕事をやらせてもらってるからには、ちゃんと仕事しなきゃなって思わされた、この映画を観て」
──あのセリフひとつで、そこまで考えましたか。
小沢「うん。俺たちみたいな仕事をする人がいなくたってみんな生きていける。だけど、それだと生きていく意味みたいなものが失われてしまうから、みんなが生きていく世界を楽しく、色鮮やかに美しくする仕事。それは長澤さんが演じたホテルマンの仕事も同じだと思うけど。だから、無駄な仕事なんてひとつもないよなって思わされたよね」
──なんか、頑張って働かなきゃって気持ちになってきました(笑)。
小沢「“働く”って言い方が、今の日本だと、ブラック企業の問題とかであんまりいいイメージないけどさ。本来、“働く”って漢字は“人が動く”って書くじゃん。“動く”ってことは、“命が動いている”ってことだから。命を躍動させなきゃいけないんだよ。お給料もらうためにしんどい仕事をやれ、とかってことじゃなくて、生まれてきた以上は、それぞれが自分にできることを何かやらなきゃいけないってことなんだと思うんだよね」
──ちなみに、みんなの人生に色をつけているとするなら、小沢さんの色は何色なんでしょうか?
小沢「でも、俺は暗い色なんだよなぁ(笑)。藍色とか冷たい青だよね。(相方の井戸田)潤なんか、まさに暖色系で。なんか、オレンジっぽいでしょ?」
──オレンジっぽいですね、井戸田さん。
小沢「俺がジャイアンツファンで、潤がドラゴンズファンだから、ホントは(イメージカラーは)逆じゃないといけないんだけどね(笑)」
小沢一敬プロフィール
愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。
取材・文=八木賢太郎