<横浜流星> 『はじこい』ゆりゆり&『よんまり』藍…2作の“受験生”役で見えた進化の証
たとえば“よんまり”第7話には、兄・廉(桐谷健太)の期待を背負い、大学受験に向かう藍の後ろ姿のカットがあった。コートにマフラー姿で試験会場の前に立つバックショットは、“はじこい”9話で匡平が順子に見送られ、大学受験のセンター試験会場に向かっていく後ろ姿とほぼ同じシチュエーションだ。
だが、そこに匡平のイメージは微塵もない。なぜなら、そこまでの藍の心の機微を見守ってきた視聴者には、その背中に“背負っているもの”の重さがはっきりと見えるからだ。
“よんまり”の藍には、親に代わって自分の面倒を見てきた兄・廉への感謝の思いがある。一方で、自分の作った料理を「おいしい」と言ってもらうことで自分自身が満たされることも自覚している。
廉をがっかりさせたくはないが、大学に進まず料理の専門学校に行きたい。そこに至るまでの一つひとつの言葉や感情を丁寧に積み重ねて大学入試会場の前に立った藍。横浜は、背中ひとつでその葛藤をくっきりと浮かび上がらせている。演じる横浜が「藍」というキャラクターを一人の人間として生きていることが如実にわかる場面だった。
引いた視点と、叩き込んだ体の動き
横浜がセリフや表情を超えた感情表現に長けているのは、特技の空手の影響もあるかもしれない。小学校一年生から極真空手を学び、2011年には国際青少年空手道選手権大会13・14歳男子55kgの部で優勝して世界一に。
空手の鍛錬は、目標に向かってまっすぐに努力する意志の強さに加え、自分を冷静に客観視できる高い位置からの視点ももたらしたに違いない。
鍛え抜かれた身体能力を持つ一方で、俳優の道を歩き出してからはその体の動きにどう感情を乗せていくかを徹底的にトレーニングした。トーク番組などでは、10代後半の頃に演劇のワークショップを掛け持ちし、徹底した演技指導を受けた経験を明かしている。
1年に2度の“受験生役”を演じたことで垣間見えた、俳優・横浜流星の現在地。2020年は1月クールのドラマ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」(日曜夜10:30-11:25、日本テレビ系)でドラマ主演デビュー(※清野菜名とのW主演)することが決まっている。類まれなルックスを持ちながらも、身体全体で感情表現できる稀有な若手俳優、横浜流星。その快進撃はまだ始まったばかりだ。