<アライブ>医療監修・小野麻紀子氏「患者さん目線でも現実に近い作品になっていると思います」
「がん患者さんは見た目では分からないことも」
――小野先生が腫瘍内科医を志したきっかけを教えてください。
研修医のときにさまざまな診療科を回ったんですが、やっぱり圧倒的にがんの患者さんが多かったんです。消化器内科、産婦人科、血液内科などいろいろな診療科がありますが、入院している患者さんの中にがんの方がいない診療科はほとんどありません。
私が研修医だった頃は今よりもがん医療が発達していなかったので、患者さんがかわいそうだなって思ったのが腫瘍内科医を目指したきっかけです。
当時、腫瘍内科は大学病院にはほぼ存在していなかったので、「腫瘍内科医になりたい」と思ったらがんを専門に扱う“がんセンター”に行くしかなかったんです。なので私も研修医の期間が終わった後は、がんの専門病院に行きました。
――大学病院にも腫瘍内科が増えてきているそうですね。
増えてきていることはうれしいですね、ただ腫瘍内科医は1300人程度しかいないですし、まだ設置していない大学病院も多いので、もっと良くなっていくといいなと思っています。
――「がん=死」というイメージを持つ人も少なくないですが、このようなイメージはどう思いますか?
そういうイメージを持ってしまうのも仕方がないと思いますが、実際は手術して5年以内に再発せずに治っている方も多いです。また皆さんの周りにも、案外がんを乗り越えた方って多いと思います。がんになったことがある方の中には、本当に身近な人にしか言っていない人も多いんです。
がんは2人に1人はかかる国民病なので、がんになっても動揺せず、隠さずに対応できる社会になってほしいと思っています。
確かに亡くなることも多いですが、がんになったら明日死ぬわけではありません。どんどん新しい薬ができているので、診断後すぐに亡くなるというより、年単位で元気な方が増えています。
そうなると、患者さんががん治療を受けながら、どういうふうに生きていくのかという部分が重要になってきます。
がん患者さんは見た目では分からないことも多いです。髪の毛の抜けない抗がん剤もありますし、髪の毛が抜けていてもおしゃれなウィッグをしていたら私でも分からないこともあります。普通の生活とほとんど変わりない場合も多いので、自分の周りにいても分からないことも多いと思います。
定期的に通院し、抗がん剤の治療は受けていても、そのくらい元気で、仕事もできるし、趣味もしながら生活できる。どういうふうに生活していくかは診療の中でも相談を重ね、大事にしています。
――作品の中でも外来のみで治療を進めている患者さんが多いですね。
今の抗がん剤治療は、およそ7割が通院です。治療の日はお休みや半休を取っていただきますが、翌日からはフルで働いている方も多くいらっしゃいます。