<アライブ>描きたかったのは「友情とは別の深い信頼関係」プロデューサーが語る最終話の注目ポイントは?
“献身”がキーワードの一つ
――本作のコンセプトや、それを視聴者に伝えるためにこだわっている部分は?
コンセプトは、つらい現実を受け入れながら前に一歩踏み出すという、とてもベーシックで普遍的なのですが、そういうものを考えていました。
がんにかかるということは、昔は“もう助からない”というイメージがあったと思います。でも、医療が発達してからは、“がん=死ではない”という考えがだいぶ普及して、社会ががんと向き合うようになりました。
だから、脚本上では、登場人物たちがつらい現実を目の当たりにする描写を多くするのではなくて、どういうふうに前に進んでいくかというところに重きを置いています。病気を宣告されたという描写を抑えることで、メッセージがより伝わりやすくなっているのかなと思います。
――SNSなど視聴者の方々の声はご覧になっていますか?
検索できる限りは見るようにしています。今、多いのは、心(松下奈緒)と薫(木村佳乃)の関係についてですよね(笑)。友情とは別の深い信頼関係を描きたかったので、恋愛感情があるようにも見えるのかもしれません。
実は、今作のキーワードの一つが“献身”でした。家族、恋人ではない誰かに、自分の身をささげることができるのかということと、ささげ合ったのに、その人が裏では自分に贖罪(しょくざい)の気持ちを持っていたという、反比例する、アンビバレントな話をやりたいなと思っていたので…これらを並べるといろいろ想像はされるのかなと思います。それが今SNSで盛り上がっている、と(笑)。
――そこは意図していなかったのですね。何か本作の裏設定として決めていたことはありますか?
脚本上出せる設定は全部出していて、“実はこうでした”というものは第1話の最後だけにしています。第1話の最後は、そこまでのものを全部ひっくり返すような描写だったと思うんです。
信頼できる人ができたと思ったら、その人が一番の近付いてはいけない人だったという、よくあるどんでん返しの手法でしたが、それ以降はあまり隠していることもないです。ただ、一つあるとすれば、第1話で薫が心の自転車のタイヤをパンクさせていたことですかね(笑)。
「医療ミスをしたのは私なの」と薫が告白する第5話と、「実は須藤先生(田辺誠一)だった」という第6話。その後、2人の関係は正常化されましたが、パンクさせたことは隠したままです。
パンクのことは、医療ミスの話をしたあとに「パンクも私なんだよね」と言われたとしても心は戸惑うしかないですし、そこで、「やっぱり!あれもあなたなの!?」と思うのか、「それよりすごいこと聞いたし…」と思うのか、心があの自転車に対してどれくらいのモチベーションがあるのか決めていないので、それだけは謎のままです(笑)。