二階堂ふみ、「エール」で見せる“少女漫画のヒロイン”感 コミカルな演技&繊細な乙女心を両立
相手役を魅力的に見せる役割は、大河ドラマ「西郷どん」(2018年、NHK総合)で演じた愛加那もそうだった。
西郷隆盛(鈴木亮平)が奄美大島にいたときの妻・愛加那は、衣裳やヘアメイク含め、しっかり設定画が描かれた歴史漫画のキャラのように、奄美大島に暮らす人物の背景と、西郷への愛情とが力強く伝わってきて、彼女の大きな愛と生命力が、島流しにあって絶望した西郷を復活させたように見えた。
また、「ストロベリーナイトサーガ」(2019年、フジテレビ系)の姫川玲子も。原作では姫川が圧倒的に主人公で、同僚の菊田はひたすら彼女を見つめる役なのだが、サーガの場合、姫川は最初のうち、群像劇の登場人物のひとりになっていて、菊田(亀梨和也)の主体性も際立ってくるようになっていた。
もちろん、脚本や演出がそう狙っているわけだが、二階堂はきちっとその狙いにハマってみせるのである。いわゆるスター・システムと言われる、スターありきのドラマや映画の作り方ではなく、あくまで物語に奉仕する“職人俳優”として二階堂は存在しているように思う。
「エール」22回で、関内家の馬具工場の職人・岩城(吉原光夫)が裕一を「極める目をしている」と言っていたが、二階堂ふみも「極める目」をしている。(文・木俣冬)