主演男優賞は「テセウスの船」竹内涼真 父に名前を呼ばれる場面は『自然に涙が流れました』【ドラマアカデミー賞】
現実にはありえない行動も自分に落とし込めるまで話し合った
――特に難しかったのはどの場面ですか?
例えば、普通、死体を発見したら警察を呼んで事情を説明するじゃないですか。でも、心はその場から立ち去ってしまう。現実だとありえないけれど、心はこの物語の世界で生きているわけですから、そこをどう表情など細かい部分を表現して、立ち去るしかないという見え方にするのか。それは自分に落とし込めるまで監督に相談しました。
だから、少なくとも現場での僕は確信を持って目の前の死体から逃げていたし、みきおに騙されていました(笑)。その積み重ねがあったから、皆さんに面白いと言ってもらえたのかなとも思いますね。
――そんな心の行動がSNSでは話題になっていましたが、視聴者の声は竹内さんに届いていましたか?
もちろんSNSでの反応は現場でも話題になっていましたし、共演した方々からも聞いていました。SNSでは「死体から逃げるな」とか「大切な証言をなぜ録音しておかないんだ」とか、いろいろ指摘されましたが、それも結果的に、このドラマが盛り上がった要因になったので良かったなと思っています(笑)。
――父親の佐野文吾を演じた鈴木亮平さんとの共演はどうでしたか?
このドラマで初めての共演でしたが、一緒にたくさんのシーンを乗り越えなくてはならない役だったので、僕は本当にお父さんというか、そんなふうに思っています。心は追い詰められたり感情がわーっと高まったりするシーンが多い中、亮平さんには毎日のようにすごく助けていただいたし、お互いに信頼し合いながら最後までやれたなと思います。
――最終回、過去にいた心が真犯人に刺されて死んでしまう場面は迫真の演技でした。
何度もできる場面ではなかったので、僕としては最初から集中して演じたけれど、監督から「死ぬときの表情が切実すぎて、見る方としては苦しくなってしまうので、もう少し心にとって幸せな終わり方に見せたい」と言われ、もう一度、撮影しました。
あの場面で心は文吾さんに「お前は俺の息子だ」と言われ、初めて「心」と名前を呼ばれる。あの一瞬で心がずっと苦しんでもがいてきたものが少し救われたと思うんです。僕も演じたときはテンションが上がっていたので、意識したわけではないけれど、自然に涙がすっと一筋流れました。