主演男優賞は「テセウスの船」竹内涼真 父に名前を呼ばれる場面は『自然に涙が流れました』【ドラマアカデミー賞】
文吾さんが亡くなるときに、心は本当のことを知らされるのかも
――そして、心はまた現在に戻り、これまでとは違った世界で父親と会う。あの終わり方は竹内さんとしても納得できましたか。
はい。僕は好きな結末で、一番いい形で終われたと思います。過去ではお母さんのおなかにいた心が無事に誕生し、大人になって妻の由紀(上野樹里)と一緒にやって来る。タイムスリップした心のことはお父さんが全部背負っていく形になりましたけれど、あのときの文吾さんの優しい表情が好きでした。
もしかしたら、あの先々で心が本当のことを知らされるのかもしれないですね。文吾さんが亡くなるときに、打ち明けられるのかも?
――心と由紀の関係も、夫婦だった世界、由紀が記者だった世界、そしてラストシーンの世界と3パターンありました。
印象的だったのは、第1話の自宅でのシーンと第6話での別れのシーン。心は第1話では「父親が殺人犯である」ことから逃げているんですよ。それで由紀に過去と向き合うよう訴えかけられていたけれど、第6話では由紀に別れを告げて真犯人と対決しにいく。そこで男として一つ成長したのかなと思いました。心が成長できたのは由紀のおかげで。
今回、実際に指輪をはめて演技をしてみて、指輪というものが心の拠り所になるんだなというのが分かりました。由紀がいない場面でも、指輪があるとやっぱり彼女のことを思い出すんですよね。でも、第6話の指輪は第1話で由紀と結婚していた世界のもので、彼女は目の前にいるけれど、妻ではない。つながっているようでつながっていない、「テセウスの船」のテーマに通じる辛さも感じました。