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<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「えんとつ町のプペルが生まれた日」【短期集中連載/第4回】

2020/09/14 19:00


『えんとつ町のプペル』という物語を描き終えたときに、「この作品は映画で届けるべきだ」と思いました。ところが、誰も知らない作品を観る為に、わざわざ映画館まで足を運んでくれる人などいません。何より、アニメーション映画を一本制作するとなると、大きな予算が必要になってきます。誰も知らない『えんとつ町のプペル』に、そんな予算がつく理由は一つもなく、映画化なんて夢のまた夢。

そこで、まずは絵本として世に出して、認知を獲得し、その後、映画に繋げようと考えました。絵本の届け方に関しては手応えを掴み始めていた頃でした。

ところが、『えんとつ町のプペル』は、絵本として出すには物語が長すぎます。「殴ってしまう人」「えんとつ町が生まれた理由」「異端審問所」、そして主人公の「ブルーノ」を入れてしまうと、とても一冊には収まりません。そこで、それらを省き、物語の一部分だけを切り抜いて再編集したのが、絵本『えんとつ町のプペル』です。

絵本『えんとつ町のプペル』は、映画の「チラシ」であり、世間はまだ『えんとつ町のプペル』の主人公を見ていません。「チラシ」というと安く聞こえてしまうかもしれませんが、制作に3年半を費やした「チラシ」です。命を削っていないハズがありません。当時は、絵本『えんとつ町のプペル』の読者の方から「映画みたい」「映画化したらいいのに」という感想をよくいただいたのですが、それもそのハズ、もともと「映画用の作品」だったのです。

クヨクヨしている


いつだったか、「作品を作り続ける為にはどうすればいいのだろう?」と考えたことがありました。やっぱり僕は作家でありたいので。たくさんたくさん考えて、「作品の売り上げで次の作品を作ってしまうと、まもなく商品を作る自分になる」という結論に至りました。「作品の売り上げで、次回作を作る」というスタイルには、「作品が売れなかったら、次回作が作れない」というリスクが伴います。そのリスクを回避する為に、多くの作り手が、お客さんのニーズを調べ、売れるような作品を作り始めますが、その順番で作られたモノは「作品」ではなく「商品」です。僕は商売人ではないので、「商品」には興味がありません。

この偏愛を貫き通す為には(世間のニーズなどを無視して純粋に作品を作り続ける為には)、作品以外の売り上げで作品を作れる(食っていける)状態を用意しておく必要があり、今日も、あれやこれやと手を打っています。

この過程を見て、多くの人は「ビジネスマンだ」と言います。時々、同業者からも「商売が上手いよね」と言われます。少し嫌な匂いが混じった言葉です。

心の底ではいつも思っています。フザけるな。僕が一体いつ商売に走ったんだ?ずっとずっと、自分のやりたいことしかやっていない。世間のニーズに合わせて「商品」を作り続けてるのは、お前らの方じゃないか。お前らが、世間を敵に回してでも生み出した「作品」を一つでもいいから今ここで僕に見せてみろ。

…ときどき、こんな感情が湧き上がってきますが、「いやいや、僕が先制攻撃をしてしまっているんだ」と気持ちを収めています。ごめんなさい。「ああ、(こんなことを思っちゃ)ダメだダメだ」と基本的には、ずっとこの繰り返し。思うようにいきません。意外とクヨクヨしています(笑)。

最後に、映画『えんとつ町のプペル』の主人公である「ブルーノ」の言葉を綴っておきます。この台詞は、自分に言い聞かせるように書いたような気がします。

「他の誰も見ていなくてもいい。黒い煙のその先に、お前が光を見たのなら、行動しろ。思い知れ。そして、常識に屈するな。お前がその目で見たものが真実だ。あの日、あの時、あの光を見た自分を信じろ。信じ抜くんだ。たとえひとりになっても」

(第5回は9月21日[月]更新予定)

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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◼︎『映画 えんとつ町のプぺル』特報【12月25日公開】

PROFILE●1980年、兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年、梶原雄太と「キングコング」を結成。2001年に深夜番組『はねるのトびら』のレギュラー出演決定と同時に東京進出を果たす。同番組がゴールデン枠に移行した2005年に「テレビ番組出演をメインにしたタレント活動」に疑問を持ち、「自分の生きる場所」を模索。2009年に『Dr.インクの星空キネマ』で絵本デビューを果たす。2016年、完全分業制による第4作絵本『えんとつ町のプペル』を刊行し、累計発行部数45万部を超えるベストセラーに。2020年12月公開予定の『映画 えんとつ町のプペル』では脚本・制作総指揮を務める。クラウドファンディングでの合計調達額は3億8000万円を突破。現在、有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰。会員数は7万人を突破し、国内最大となっている。芸能活動の枠を越え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中。

◼︎オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」
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西野が考えるエンタメの未来や、現在とりかかっているプロジェクトを先んじて知れたり、場合によってはクリエイターとして強引に参加させられたりする国内最大の会員制のコミュニケーションサロン。コワーキングスペース「ZIP」の利用やサロンメンバーだけでの特典も多数。

画像一覧
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  • 映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第4回
  • 【画像を見る】映画『えんとつ町のプペル』より。絵本にはなかったシーン、キャラクターが数多く描かれ、西野亮廣がこの作品に込めた思いが明らかになる
  • 2016年秋に発売された、絵本『えんとつ町のプペル』。分業制による制作体制や全文無料公開など、前代未聞のアプローチが話題を集めた
  • 絵本『えんとつ町のプペル』より。煙に覆われた「えんとつ町」でただ一人星の存在を信じ、ゴミ人間・プペルと仲良くするルビッチは、時に周囲の人間から迫害を受けてしまう

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    西野亮廣

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