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<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「僕らが起こした事件」【短期集中連載/第7回】

2020/10/05 18:55

映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第7回
映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第7回


芸人、絵本作家ほか、ジャンルの垣根を飛び越えて活躍する西野亮廣。2016年に発表し50万部を超えるベストセラーとなっている絵本『えんとつ町のプペル』だが、実は映画化を前提として設計された一大プロジェクトだった。構想から約8年、今年12月の映画公開を目前に、制作の舞台裏と作品に込めた“想い”を語りつくします。第7回目は、身内からのバッシングをも覚悟して絵本『えんとつ町のプペル』の無料公開に踏み切った、当時の思いと勝算について明かします。

【画像を見る】映画『えんとつ町のプペル』より。本予告動画、オープニング主題歌、そして声優の発表が10月中旬に行われる予定だ
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子供扱いはしない


絵本作家になるキッカケをくださったのはタモリさんです。タモリさんの中に「背中を押しちゃった手前」があったのかなかったのか、いずれにしても、よく呑みに連れて行っていただき、よく絵本の話をさせていただきました。覚えているのは、タモリさんが行きつけのBARで「戦争が終わらない理由」について話してくださった夜のこと。

「西野。どうして戦争がなくならないか、考えたことあるか?」「ないです。タモリさんはあるんですか?」「ないよ。だから、今、急いで考えている」「なんで、この話題になったんでしたっけ?」「BARでこういう話をしたらカッコイイからだろ」

本気なのかフザけているのか、どこまでも掴めない人です。「戦争が起きるのは、愛があるからだと思わないか?」「愛ですか?」「奪われたものに向けていた愛の大きさに比例して、奪った人間への恨みが大きくなるだろ」「たしかに。植物には、そういった報復はありませんしね」「人間があんな厄介な感情を持ち合わせていなければ、戦争なんて起こらないんだろうけど、それはそれでツマラナイ世界だよな」「ラブorピースですもんね」「厄介だね、まったく」

この夜の会話から『オルゴールワールド』という絵本が生まれました。原案をタモリさんが担当し、絵と文を僕が担当させていただきました。戦争と平和とエンターテイメントを取り扱った物語です。

タモリさんの一言から生まれた絵本『オルゴールワールド』(幻冬舎刊)。この作品を最後に、西野は分業制による絵本制作に舵を切った
タモリさんの一言から生まれた絵本『オルゴールワールド』(幻冬舎刊)。この作品を最後に、西野は分業制による絵本制作に舵を切った


『オルゴールワールド』のような作品を発表する度に、世のお父さんお母さんから「この絵本は、子供向けですか?」という質問をいただきます。絵本のタッチも相まって、「ウチの子には、この内容は、まだ早すぎるんじゃないか?」と心配されているのだと思います。心配される気持ちもわかります。しかし、多くの大人が何気なく使う、この「子供向け」という言葉には、タモリさんも僕も疑問を持っていました。

僕の家は4人兄弟のサラリーマン家庭で、それほど裕福ではなく、子供ながらにそのことは理解していました。もちろん授業で使う「習字セット」などは兄ちゃんのお下がり。新しく始まる書道の時間で、僕の「習字セット」だけが墨で汚れています。ちなみに「裁縫セット」は姉ちゃんのお下がり。ケースのデザインが“キキララ”だったので、かなり厳しい戦いになりました(笑)。今思うと本当に些細なことなのですが、子供心には結構こたえるんです。ただ、そんなことは口にはしませんでした。大変なのは父ちゃんと母ちゃんなので。

お正月になると親戚の家を回りました。そこで親戚のオジサンから「お年玉」を貰うわけですが、まさか僕が受け取るわけにはいきません。僕は、この「お年玉」を母ちゃんに渡し、家計の足しにしてもらおうと考えました。ですが、小学校低学年の息子が「家計の足しにして」とお年玉を渡してしまうと、傷つくのは「息子に気を使わせてしまった母親」です。僕は、母ちゃんが傷つかない方法を一生懸命考えました。その結果、「預かっといて」と言ってお年玉を渡し、返してもらうことを忘れることにしました。

西野家では年に一度、家族で外食に行く日がありました。近所にあった『やましげ』というステーキ屋さんです。父ちゃんは「好きなものを食べろ」と言いますが、うちは四人兄弟。皆がステーキを注文してしまうと大変な金額になってしまいます。しかし、だからと言って、父ちゃんの懐事情に気を使っているところが見つかってしまうと、傷つくのは父ちゃんです。そこで僕は「野菜が好き」ということにして、「野菜炒め」を注文しました。小学1〜2年生の頃の話です。

僕らは姿形こそ大きくなりましたが、中身は当時からあまり変わりません。幼稚園の頃から親の顔色をうかがっていましたし、「あのグループを敵に回すと厄介なことになる」というポジショニングをしていました。もちろん、「○○でちゅよ〜」といった言葉で話しかけてくる大人を軽蔑していました。あんな言葉を使っている子供は一人もいなかったので、シンプルに気持ちが悪かったです。

下に続きます
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◼︎『映画 えんとつ町のプぺル』ED主題歌(ダンスバージョン)

PROFILE●1980年、兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年、梶原雄太と「キングコング」を結成。2001年に深夜番組『はねるのトびら』のレギュラー出演決定と同時に東京進出を果たす。同番組がゴールデン枠に移行した2005年に「テレビ番組出演をメインにしたタレント活動」に疑問を持ち、「自分の生きる場所」を模索。2009年に『Dr.インクの星空キネマ』で絵本デビューを果たす。2016年、完全分業制による第4作絵本『えんとつ町のプペル』を刊行し、累計発行部数50万部を超えるベストセラーに。2020年12月公開予定の『映画 えんとつ町のプペル』では脚本・制作総指揮を務める。クラウドファンディングでの合計調達額は3億8000万円を突破。現在、有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰。会員数は7万人を突破し、国内最大となっている。芸能活動の枠を越え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中。

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西野が考えるエンタメの未来や、現在とりかかっているプロジェクトを先んじて知れたり、場合によってはクリエイターとして強引に参加させられたりする国内最大の会員制のコミュニケーションサロン。コワーキングスペース「ZIP」の利用やサロンメンバーだけでの特典も多数。

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  • 映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第7回
  • 【画像を見る】映画『えんとつ町のプペル』より。本予告動画、オープニング主題歌、そして声優の発表が10月中旬に行われる予定だ
  • タモリさんの一言から生まれた絵本『オルゴールワールド』(幻冬舎刊)。この作品を最後に、西野は分業制による絵本制作に舵を切った
  • 重版を重ね絵本として異例のヒットを記録していた『えんとつ町のプペル』の無料公開に踏み切ったのは、発売わずか3か月後のことだった

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