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<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「僕らが起こした事件」【短期集中連載/第7回】

2020/10/05 18:55


ところが、どういうわけか、自分が大人になると、その当時の気持ちはすっかり忘れてしまうようで、「○○でちゅよ〜」という言葉を子供にかける大人は少なくありません。子供を「自分よりも能力が低い生き物」として見積もり、その結果、「この絵本は子供向けですか?」という言葉を使ってしまう。翻訳すると「私よりも能力が低いこの子でも理解できますか?」です。

大人がその調子で絵本を選ぶもんだから、子供の頃、僕の身の回りには「ゆるフワ絵本」しかありませんでした。多くの大人は「子供は丸い物が好きだから」「子供はカラフルな物が好きだから」と言いますが、どこのデータを参考にしたのでしょうか?

僕が子供の頃は、戦闘機や戦艦などのプラモデルのパッケージのイラストが大好きでした。まるで写真のようなイラストに胸が踊ったものです。とりわけ、『風の谷のナウシカ』に出てくる生き物や機械には「なんじゃ、こりゃー!?」と食らいつきましたが……こと絵本になった瞬間に、親や先生が僕の目の前に出すのは、『ねないこだれだ』と『しろくまちゃんのほっとけーき』。

当然、そういった作品が好きな子もいれば、そうではない子もいます。それらは「年齢」で分けられるものなどではなく、「好み」の問題です。東京タワーの機能美に興奮する幼稚園児もいれば、何の感動も覚えない大人もいます。少なくとも「ビジュアル」に対象年齢などありません。

しかし、絵本を買うのは「親」です。大人が「子供は丸い物が好き」「子供はカラフルな物が好き」と盲信している限り、それ以外の絵本が子供の手元に届くことはありません。当然、「大人が買いたがらない絵本」を作る絵本作家も少なくなります。

タモリさんも僕も、子供の頃は「描き込まれた絵」が好きだったものですから、大人が当時の僕らのような子供達を切り捨ててしまっていることに対しては疑問を持っていました。「子供向け」という言葉を捨て、自分達が作りたい絵本をフルスイングで作り、どうにか大人の壁を突破し、今現在、無視されてしまっている「あの頃の僕らのような子供達」に届ける……それが絵本制作を走らせた僕らの課題でした。

絵本は利用者(読者)と購入者が違います。子供に刺さる作品であろうと、親が「買おう」と思わなければ、子供には届きません。どうやら、かなり分厚い壁ですが、一つだけ希望がありました。それは「数が少なくて顕在化していないだけで、タモリさんや僕のように考えている大人がどこかにいる」ということです。どうにかして、その人に見つかればいい。そこで僕は、一つの賭けに出ました。

出版業界を揺るがせた『えんとつ町のプペル』全ページ無料公開


絵本『えんとつ町のプペル』は発売開始から重版が続き、たちまち10万部を突破。絵本としては記録的なスタートを切りました。個展会場には次から次へとお客さんが押し寄せ、ついには入場2時間待ち。なんてったって、長年、燻っていたものですから、これには周りもお祭り騒ぎです。そんな中、僕は、担当の袖山さんに一本の電話をしました。

「袖山さん。『えんとつ町のプペル』をネットで全ページ無料公開しましょう」「全ページですか?」「はい。全ページです」

売り物を無料で提供するというのですから、反論を挙げればいくらでも出てきます。「ネタバレした作品を誰が買うんだよ」という意見もあるでしょう。ただ、僕には勝算がありました。

下に続きます
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https://mvtk.jp/Film/070395

◼︎『映画 えんとつ町のプぺル』ED主題歌(ダンスバージョン)

PROFILE●1980年、兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年、梶原雄太と「キングコング」を結成。2001年に深夜番組『はねるのトびら』のレギュラー出演決定と同時に東京進出を果たす。同番組がゴールデン枠に移行した2005年に「テレビ番組出演をメインにしたタレント活動」に疑問を持ち、「自分の生きる場所」を模索。2009年に『Dr.インクの星空キネマ』で絵本デビューを果たす。2016年、完全分業制による第4作絵本『えんとつ町のプペル』を刊行し、累計発行部数50万部を超えるベストセラーに。2020年12月公開予定の『映画 えんとつ町のプペル』では脚本・制作総指揮を務める。クラウドファンディングでの合計調達額は3億8000万円を突破。現在、有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰。会員数は7万人を突破し、国内最大となっている。芸能活動の枠を越え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中。

◼︎オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」
https://salon.jp/nishino
西野が考えるエンタメの未来や、現在とりかかっているプロジェクトを先んじて知れたり、場合によってはクリエイターとして強引に参加させられたりする国内最大の会員制のコミュニケーションサロン。コワーキングスペース「ZIP」の利用やサロンメンバーだけでの特典も多数。

画像一覧
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  • 映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第7回
  • 【画像を見る】映画『えんとつ町のプペル』より。本予告動画、オープニング主題歌、そして声優の発表が10月中旬に行われる予定だ
  • タモリさんの一言から生まれた絵本『オルゴールワールド』(幻冬舎刊)。この作品を最後に、西野は分業制による絵本制作に舵を切った
  • 重版を重ね絵本として異例のヒットを記録していた『えんとつ町のプペル』の無料公開に踏み切ったのは、発売わずか3か月後のことだった

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    西野亮廣

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