たけし「血と骨」以来12年ぶりに自作映画以外で主演
「スモーク」('95年)でベルリン国際映画祭銀熊賞に輝くなど、ハリウッドで活躍する映画監督ウェイン・ワンが初めて日本映画のメガホンを取る「女が眠る時」が、ビートたけし主演で'16年に公開されることが発表された。
たけしは自作の映画を除けば「血と骨」('04年)以来12年ぶりの映画主演となる。注目の共演者は西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリら。7月11日に映画本編が都内でクランクアップし、ワン監督をはじめ、たけし、西島、忽那、小山田が登壇して製作発表記者会見が行われた。
同作は、スペイン人作家ハヴィア・マリアスが'09年にアメリカ・ニューヨーカー紙で発表した短編小説「WHILE THE WOMAN ARE SLEEPING」をワン監督の手で映像化。気心の知れた日本人プロデューサーとの打ち合わせを経て、日本で映画化することをワン監督自らが提案。
ワン監督にとって初めてとなるオール日本人キャストで邦画の監督に挑んだ。主演のたけしは、謎めいた初老の男・佐原を、西島は佐原に振り回されていく作家・健二を、忽那はミステリアスなヒロイン・美樹、そしてニューヨーク在住の国際派女優・小山田が健二の妻・綾を演じる。
あらすじは、作家の健二(西島)は1週間の休暇を取り、妻の綾(小山田)と共に郊外のリゾートホテルを訪れる。初めて書いた小説がヒットしたもののスタンプに陥り、今後就職することが決まっていた健二は、綾との関係も倦怠(けんたい)期を迎え、無気力な時間を過ごしていた。
滞在初日、健二はプールサイドで異様な存在感を放つ初老の男・佐原(たけし)と若くて美しい女・美樹(忽那)のカップルに目を奪われる。その日以来、健二はホテル内で二人を見かけるたびに後をつけ、部屋をのぞき見るようになっていく。
すると、部屋では美樹の体の産毛をカミソリで丁寧にそり、毎晩彼女が眠る姿を撮影し続ける佐原の姿があった。自ら佐原に近づいた健二は、佐原と言葉を交わしたものの、美樹が眠る動画を見せながら彼が放った「あの子の最後の日を記録しようと思って」という言葉に底知れない恐怖を覚える…というストーリー。
会見では、たけしが「こんにちは渡辺謙です。『トニー賞』をもらえなくて、審査員を殴ってやろうかなと…」といきなりとぼけたあいさつをして、ワン監督を含め一同の緊張を一気にほぐす。
「いま撮影が終わったばかりで、お風呂に入っていい調子になっちゃいました(笑)。今回の映画は自分のキャリアの中では久々に緊張して、手探りの状態が続いたんですけど、やってみていい勉強になりました。役者としても監督としても」と、撮影を振り返った。
なぜ日本での撮影を決めたのかと聞かれたワン監督は「まずは渡辺謙さんと一緒に仕事をしたかった(笑)」と、たけしのボケに対する“アンサーボケ”で報道陣の心をつかむ。
「日本は昔から親しみがあり、国際的な映画を作りたかった。そんな時、西島さんが香港の私のところまで訪ねて来てくれて、話をしてみたら素晴らしい俳優さんだなと思い、西島さんの出演から始まりました。たけしさんもこの作品に興味を持っていてくれて出演したいとおっしゃってくださり、やってみようと。中国、アメリカ以外の国で新たな発見をしたいという気持ちもあってこの映画を撮ろうと思いました」と、打って変わってワン監督は真剣な表情で明かした。
この作品への出演が決まった感想について、たけしは「事務所の社長から『ウェイン・ワン監督がちょっと出てくれと言ってるぞ』と。だから『ああ、そうですか。いいですよ、あの監督好きですから』と答えたんです。で、いざ台本をもらったら、俺の名前が一番最初に書いてある。これはおかしいじゃないかと(笑)。西島くんが主演って聞いていたのに。台本を読むと確かに西島くんはいっぱい出ていて、絡みのシーンもいっぱいあって…。でも俺は何もなくて、情けない変質者の役(笑)。でももちろん、作品に参加できて良かったです」と語った。
一方、西島は「ワン監督は素晴らしい作品を何本も撮られていますけど、中でも僕は『スモーク』という作品が好きで時々見返しています。その監督からお話をいただいて、2年前に香港に行って役について深く話してきました。それで自然にすっと始まった。撮影が始まるずっと前から役について話をさせてもらったのですが、そのプロセス全てが幸せでした」と感慨深げに語る。
また、同じくキャストに決まる前に監督に会ったという忽那は「監督は美樹の役に女優さんを配役するつもりはなくて、見た目重視でモデルさんを探していると聞いていたんです。でも『一度お茶でも』ということでお会いして、美樹の役をいただけることになったので、出演が決まった時は本当にうれしかったです」と、監督との秘話を明かした。
渡辺謙は出ていないけど、“役者・ビートたけし”の真骨頂が見られるとき、眠っている場合じゃないかも。
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
'16年、全国東映系でロードショー予定
