【試写室】「緊急取調室」名女優の演技でマル裸に!
決めぜりふは「あなたをマル裸にしてみせる」。といっても、男女のセクシーなやりとりではなく、9月27日(日)放送のドラマスペシャル「緊急取調室」(テレビ朝日系)の話だ。
同作は、取り調べの可視化を実施する緊急事案対応取調班(=キントリ)の女性刑事・真壁有希子(天海祐希)が、さまざまな凶悪犯と対峙(たいじ)し、一進一退の心理戦を繰り広げていく刑事ドラマ。
昨年1月期に木曜夜9時枠の連続ドラマとして放送され、大きな反響を呼び、1年半の月日を経て、スペシャルドラマとなって帰ってきた。
田中哲司演じる梶山勝利管理官の「さあ、皆さん出番です」の言葉で、取り調べに向かうキントリメンバーの表情の変化を見ると、見ているこちらも「さあ、やるか!」という気にさせてくれる。
今回は、番組史上最強の難敵ともいうべき、松下由樹、斉藤由貴の“Wゆき”がゲストとして参加している。
ストーリーは、取調室を取材するため、報道番組のキャスター・三沢早苗(斉藤)が緊急事案対応取調班に現れる。可視化の必要性や、正々堂々と戦う覚悟を熱弁するキントリの紅一点刑事・有希子に、キャリアウーマンの早苗はすっかり共感し、「いい友達になれそう」と、声高らかに固い握手を交わす。
翌日、キントリは前日の朝に女子刑務所から仮釈放されたばかりの元美容師・矢島聖美(松下)の取り調べ要請を受ける。
親友の紹介で付き合い始めた恋人を殺した罪で6年も服役し、ようやく解放されたにもかかわらず、仮釈放からわずか3時間15分後に「人を殺した」と言って自首してきた。
実際に供述通りの場所から、聖美の指紋や皮膚が付着した凶器と、男性の遺体が発見される。しかし、不可解なことに、遺体の死亡推定時期は約1週間前。どう考えても、刑務所に収監中だった聖美には不可能な犯罪だった。
聖美はなぜ犯し得ない罪を自白したのか、そのうその裏にはどんな真実が隠されているのかを、キントリメンバーは“マル裸”にするべく捜査に乗り出す…というもの。
記事でも度々書いてきたが、一足先に完成DVDを見せてもらった感想は、天海、松下、斉藤…3人の女優たちの演技が圧巻ということに尽きる。特に松下の演技は恐ろしい。
おしとやかな元受刑者から、有希子を挑発する老練な被疑者、はたまた友人思いの地味な女性、それらを切り替えるスイッチが最初から体に付いているのかのように、次々と新しい顔を見せる。どれが本物の顔なのか、最後まで見てしっかりと判断してもらいたいが、そのあたりはさすが日本を代表する女優だ。
もちろん井上由美子という稀代のヒットメーカーが紡ぎ出すストーリーがあってこそなのだが、結末は記者の予想をはるかに超えたものだった。
天海演じる有希子と共に難攻不落の被疑者を切り崩す取調官を演じるのは、大杉漣、小日向文世、でんでんというおなじみの顔触れ。その上にいる管理官の田中、そして今回から登場の新刑事部長役の大倉孝二という、非常に濃い顔メンバーがそろっている。
天海も“おじさまトリオ”と称していた大杉、小日向、でんでんのお三方については、大ベテランに失礼を承知で言わせてもらうと「とにかくかわいい」。有希子の後ろをくっついてひょこひょこしている(ように見える)かと思えば、悪態をついてみたり、はやしたてたり、まるで小学生が好きな女子にいたずらを仕掛けるような印象すら受けた。やる時はやるギャップも魅力の一つだろう。
そして、有希子と梶山の小競り合いに信頼関係、有希子と家族との絆、“モツナベコンビ”こと鈴木浩介、速水もこみちの手下感、もう一人の“ゆき”斉藤のウイットに富んだ絶妙な表情、どれをとっても見応え十分だ。
いずれにしても今回注目すべきは強い女性たち。“女は強い”とよくいわれるが、テレビ朝日系で7月期に放送された木曜ドラマ「エイジハラスメント」の言葉を借りれば、彼女たちこそ“女強人”なのではないかと思ってしまったほど。演技に演技を重ねる女優たちの対峙は見逃すことなかれ。
スリリングな展開に、スタイリッシュな音楽も相まって繰り広げられる「緊急取調室」の世界。見れば序盤で「面白くなってきたじゃな~い?」という、有希子の口癖が自然と出てしまうはずだ。
そして見終わった後には、自分の心も体(?)もマル裸になっている…かもしれない。
9月27日(日)夜9:00-11:10
テレビ朝日系で放送