「ぼんくら2」制作統括が語る“時代劇の自由さ”
毎週木曜夜8時から放送中の木曜時代劇「ぼんくら2」(NHK総合)が、12月3日(木)に最終回を迎える。最終回を前に、主演の岸谷五朗と制作統括の真鍋斎氏を直撃。最終回の見どころと、時代劇への思いを聞いた。今回は、真鍋氏が時代劇をめぐる現状に対して警鐘を鳴らす後編。近年少なくなってしまった時代劇の面白さを、作り手の目線で語ってくれた。
【「ぼんくら2」制作統括が“視聴率至上主義”に警鐘!から続く】
――さて、前半では、視聴率をめぐって時代劇の数が減る中、“時代劇を作成する能力”の継承が重要だというお話をしていただきました。継承には若い後継者が必要ですが、現在、時代劇の現場は高齢のスタッフが多いという話を聞きます。実際のところはいかがでしょうか?
それは、ご年配の方も働いているということであって、実際は中年の方、若い方もいるんですよ。若い人で時代劇を作りたいと言って入ってくる人も、東京で仕事をしているとあまり見掛けないですが、京都ではよくいます。
まあ、将来的に時代劇だけを作りたいのか、何か違うことをしたいのかまでは分かりませんが、ちゃんと時代劇を勉強しているスタッフもきちんといます。
――では、そんな後進の方に向けて、真鍋さんが時代劇を作る面白さを挙げるとすれば何でしょう?
実は、時代劇って自由なんですよ。かつらをかぶりますし、所作がありますし、表面的なところでは形式的に思われるかもしれませんが、逆に言えば、それさえ守っていればいいんです。
極端に言えば主人公が悪人をバッサバッサと切り捨てるなんてことがあるわけです。現代劇ではまずありえません。一種のファンタジーなんだと思います。ただ一方で、道徳的な意味での縛りはありました。例えば不倫や浮気で処罰されることもあって、そういった時代的な縛りが登場人物の葛藤を生むわけです。そういう何をしてもいい自由さと、日本人の道徳的な縛りというギャップが時代劇の楽しさだと思いますね。
――NHKでは、大河ドラマと木曜時代劇の2つの枠で連続時代劇を放送していますが、両者の一番の違いはどこにあるとお考えですか?
大河もフィクションなので、もちろん時代考証よりドラマとしての面白さを取ることはありますが、基本的には史実にのっとって作っているものです。それが大河ドラマの醍醐味(だいごみ)でもあります。木曜時代劇はもう少し軽いですが、より自由度は高いです。時代劇作りの面白みが、特に感じられますね。大河は、その製作費も含めて時代劇としては特殊なものです。木曜時代劇は、大河があるから失くしていいといったものではなく、量産できる連続時代劇という意味で必要だと思います。
――時代劇の現状について語ってもらいましたが、真鍋さんご自身で印象に残っている作品や、時代劇を見るきっかけになった作品は何かありますか?
テレビドラマで言えば、「必殺仕事人」とかが好きでしたね。今、「必殺仕事人」を作っていたというスタッフと仕事をしていますが、いろいろと思い出話を聞いています。
あの作品も面白くて、よく闇の中で目のところにだけ明かりが差し込んで…という照明を使うのですが、当初はテレビ局の上層部から「なんだこれは! 暗過ぎる!」といろいろ言われたそうです。でも、ヒットしましたよね。つまりは、上層部が言うことなんてアテにならない…と(笑)。というのは冗談ですけど、そうやっていろんなことに興味を持って話を聞いてみると、どれもそれなりに深いんです。若い人にも、「時代劇だから…」というのではなくて興味を持ってもらえたらうれしいですね。
僕はもともと岐阜の山奥の出身で、子供のころ娯楽がほとんどなかったんです。その中で、物語を見せてくれて、心を醸成してくれたのはテレビだった気がします。だから、やはりどこかに「テレビにこだわりたい」という思いはありますね。特に、NHKは全国どこでも見られますから。そして、その中に“時代劇もある”ということは大事なんだと思いますよ。
――最後に「ぼんくら2」の話に戻ります。最終回直前ですが、注目ポイントを教えてください。
今作は、話の筋が本当に簡単です。殺人事件が起きて、容疑者が捕まったものの、どうやら真犯人ではない。そこから、疑わしい人が何人も出てくるけど、どうやらその人たちではない。“さて、真犯人はいったい誰か?”というだけですからね。
クライマックスは、平四郎たちがどんどん真実に迫っていき、謎が次第に明らかになるのっていきます。王道の謎解きミステリーなので、それを楽しんでほしいですね。
12月3日(木)夜8:00-8:43
NHK総合で放送