【試写室】「検事の死命」ブレない男の執念に感服!

2016/01/17 06:03 配信

ドラマ

“食えない”検事・佐方役の上川隆也と真っ直ぐな検察官・陽子役の志田未来

“食えない”検事・佐方役の上川隆也と真っ直ぐな検察官・陽子役の志田未来

「痴漢」とは、電車の中や夜道などで、女性にみだらないたずらをする男(「大辞林」第三版より)。その、みだらないたずらの程度によって、強制わいせつか、迷惑防止条例違反か、問われる罪が違う。ただし、被害者が受ける苦痛はしゃくし定規に決められた“程度”では計り知れないものがあり、痴漢は決して許される行為ではない。

そんな痴漢事件を題材にしたドラマスペシャル「検事の死命」(テレビ朝日系)が、1月17日(日)に放送される。

同作は、柚月裕子の推理小説“佐方貞人”シリーズのテレビドラマ第2弾として、昨年の「最後の証人」に続き、上川隆也を主演に迎えた。今回は佐方(上川)の米崎地方検察庁の検事時代が描かれるが、この骨太なドラマを一足先に視聴し、見どころを紹介する。

ストーリーは、佐方の元に、迷惑防止条例違反の容疑で逮捕された名門女子高教師・本多弘敏(津田寛治)が送致されてきた。イベント会場に向かうすし詰め状態の電車内で、女子高校生・玲奈(竹富聖花)の臀部(でんぶ)を触ったとされる容疑だが、弘敏は「でっち上げ」と犯行を否認。

さらに玲奈から「30万円払えば許す」と恐喝されたと話す。しかも彼は米崎に代々続く名家に婿入りした身で、義母の篤子(江波杏子)は地元経済界の大物だった。

佐方と事務官の陽子(志田未来)は玲奈からも事情を聞くが、「恐喝なんかしていない」と主張は平行線とたどる。だが、玲奈はどうせ自分の話など信じてもらえないと投げやりで、陽子はそんな玲奈の態度に疑問を抱く。

うそをついているのは弘敏なのか、玲奈なのか。慎重に捜査を始めた佐方は、弘敏の偽証を一つ一つ突き止め、余罪を発見し、起訴することを決める。しかし、篤子に依頼を受けた衆議院議員の大河内(寺田農)や検事正の鬼貫(山崎銀之丞)らにより、圧力が掛かってしまう。

佐方の上司・筒井(伊武雅刀)は、鬼貫らを敵に回せば検察社会で生きていけなくなり、起訴できたとしても社会的信用という視点から弘敏が有利なのは明白だからと、佐方を止めようとする。だが、ここで屈したら検事として死んだも同然と考える佐方は、“検事の死命”を懸けて起訴に持ち込む…というものだ。

前回の「最後の証人」の前日譚ということで、少し若い設定を演じる上川と公判検事・真生役の松下由樹。確かに動きや服の着こなし方がどこか若々しく感じられる…気がする。

今回佐方とパートナーを組む志田は、先日公開したインタビューで自ら語っていた通り、とても真っすぐで素直な役どころ。

つかみどころのない佐方に、真正面からぶつかっていく姿は好感が持て、こういう役をやらせたら志田の右に出る者はいないと言っても過言ではないだろう。

ストーリー、役者ともにおせちの重箱でいえば7段くらい積まれていそうな重厚感たっぷりな作品に、一服の清涼剤をもたらしてくれるキャラクター。佐方とのデコボコタッグものとして、やりとりは終始ほほ笑ましい。

そして、今回の被害者、あるいは恐喝の被疑者という難しい役どころに挑んでいるのは、作品によっていろいろな顔を見せる若手実力派女優の竹富聖花(たけとみ・せいか)だ。この竹富の本作内で見せるさまざまな顔が、大きな見どころとなっている。

痴漢被害者としての顔、痴漢をでっち上げたとされる回想シーンでの悪い顔、友達思いの優しい女の子としての顔、それ以外の顔は現時点で語るのは野暮なので割愛するが、竹富劇場に期待していい。ファンはもとより、これまで興味がなかった人でもギュッと引き込まれることは間違いない。彼女の演技には大いに泣かされた。

その他では、作品の舞台・米崎市のゆるキャラ“よねぞー”のユルいフォルムや、いつもながらちょい悪代議士役が似合う寺田に、圧倒的威圧感を漂わせる江波ら大御所の演技。生意気な子供を持つ母親を演じさせたら日本屈指のハマり方(個人の見解です)をする玲奈の母・房江役の有森成実もいい。

もし「ドラマアカデミー賞」に“最優秀反抗期の子供を持つ母親賞”があれば、間違いなく投票するだろう。

脱線したが、やはり何といっても佐方を演じる主人公・上川の演技は見応え十分。どんなに不利な状況でも、佐方として最後までブレずに事件の真実を追い掛ける姿は、とにかく上司の言うことに従わなければ出世の道が閉ざされるような境遇に置かれている人たちに勇気を与えてくれそうだ。

佐方のブレない生きざまを見て、太陽が沈む前に視聴者それぞれが“死命”を探してみてもいいかも。

ドラマスペシャル「検事の死命」
1月17日(日)夜9:00-11:10
テレビ朝日系で放送

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