大河ドラマ「真田丸」(NHK総合ほか)10月23日(日)放送からは、大坂城に入った真田幸村(堺雅人)と共に徳川と戦う“大坂五人衆”たちが本格的に登場する。出自も目的もバラバラな彼らだが、次第に力を合わせるようになる。
そんな五人衆の一人・毛利勝永を演じる岡本健一を直撃。「男闘呼組」としてデビューし、現在は舞台を中心に活躍する岡本が、勝永役と「真田丸」への思いを語った。
――まずは、オファーの経緯を教えてください。
19歳のときに初舞台を踏んでから、年に2、3回ほど舞台出演を続けて今に至りますが、2年前の’14年に初めて三谷幸喜さんの舞台「抜け目のない未亡人」に出演しました。その本番前に、三谷さんから「岡本さんは、大河ドラマとか興味ありますか?」と聞かれたんです。そこで出演のお話をいただいたのですが、それから時間が空いて「本当なのかな」と思っている頃に正式なオファーをいただきました。
――勝永について調べたことや、そこから感じた人物像を教えてください。
勝永のことを知らなかったので、オファーが来てから、資料を何十冊も読んで深めていきました。勝永の父の吉成は、秀吉の若い頃から付き従っていた人で、勝永自身も豊臣家にずっと仕えていたんです。幼少期から武術、能、茶などを習っていて文武両道。朝鮮出兵にも行っていますし、伏見城の戦いでは最大の戦績を挙げている。史実で言えば、幸村よりも手柄を挙げているようです。歴史に詳しい人からも、歴代の武将で一番強かったのではないかと聞いています。
ただ、そこまで名が残っていないというのは、名声や金、領地を増やすといったことに、まったく興味がない人だったのかなと想像しています。
――役作りはどのようにされましたか?
ひげや髪の毛は地毛です。ちょうど、「真田丸」の前にやった舞台で髪の毛を長くしていたので、そのまま挑み、体作りは、今回の撮影のためにではありませんが、殺陣や筋力トレーニング、武術の稽古のようなことは、前から少しやっていました。勝永になりきるなら、自分自身が実際に強くなるのが一番だと思うので、そのような稽古を続けています。
――演じるにあたって、ゆかりの地などは訪れましたか?
調べてみると、大坂の陣では秀頼(中川大志)の介錯をしたという話があったので、大坂城や四天王寺などは行きました。周囲は建物ばかりですが、広い大坂城の中でも人気のないところを見つけて、ちょっとイメージを膨らませたり、堀や門を見て「ここから、攻めて行ったんだな」と想像したりしました。
――大阪で感じたものはありますか?
僕の想像以上に、戦場というものはすさまじかったんだろうなということですね。それから、肉体的にもう少し強くならないといけないなと思いました。大坂城の端から端まで歩くだけで疲れてしまったんで(笑)。
――終盤からの登場ですが、ここまでの「真田丸」をどのようにご覧になっていましたか?
毎回に起承転結があって、見ていてドキドキしたり、心を打たれたり…それでいて登場人物の人間らしい部分が本当にうまく書かれているなと思います。
ストーリーを追いながら、「この時期には、勝永はこういうことをやっているはずだな」と描かれていない部分をイメージしていたのですが、ものすごく引き込まれました。それで、春くらいに三谷さんに、「オンエアを見て、いたく感動しています。台本をいただけるのを楽しみにしています」とメールしたら、「真田幸村より強いと言われた、最強のライバル毛利勝永。よろしくお願いします」という返信をいただきました。
――台本を読まれて、三谷さんの描く勝永はどんなキャラクターとして捉えましたか?
勝永は、多くを語らずに進んでいくところや、不言実行というか行動で示していくところ、何も恐れないところなど、こうありたいなと思う部分をたくさん持っている人ですね。かなりクールで、根底にはものすごく強い部分がある感じがしました。
はじめは、幸村に対しても、「名は聞いているが、すごかったのは父の昌幸(草刈正雄)じゃないか?」と、少し下に見ているのですが、幸村の策が周りの想像を超えたものなので、その部分では認めるようになります。ただ、完全に認めるのは、戦場に出てからですね。
――勝永の登場する「真田丸」終盤の見どころをどのように感じていますか?
五人衆は面白く描かれていますが、現代で言えば、全員が全日本チャンピオンや有段者というような実力者たちです。お家復興やキリスト教布教と、みんなばらばらな目的を持っているのですが、そんな彼らが次第に同じ方向を向いていくのが面白いですね。
それに、大坂城の中枢にいる人たちと牢人たちの関係性も面白いです。牢人衆は“絶対に勝てる”と思って戦準備をするのですが、どれだけやる気や力があっても、許可がないと結局動けない。そのあたりは、すごく現代とリンクする気がします。
一方で、戦わないで何とかしようとする中枢の人たちの気持ちや、秀頼を守ろうとする茶々(竹内結子)の気持ちも分かるんですよね。
――堺さんとの共演の印象を教えてください。
共演は初めてですが、スタジオの中にずっといて、どうしたら事が上手く運ぶかを考えて、現場にいい流れを作ってくれています。自分が引っ張っていくというより、引いた目で見ながらムードを作っている気がします。
――あらためて勝永を今後どのように演じていきたいか、意気込みをお願いします。
実在の人物を演じるときはいつもそうですが、その当時の本人を知っている人たちが仮にドラマを見たとしても、納得してもらえるように作っていきたいと思っています。
それから、勝永という人がこういう生き方をして、こんな仲間たちと共に戦って、こうやって亡くなっていったんだなと、見ている方の心に刻めればいいなと思います。
毎週日曜夜8:00-8:45ほか
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