草なぎ剛「僕はものすごく震えました」 【連載コラム】
主演舞台「バリーターク」を6月に終え、ひと段落したのも束の間、早くも新たな舞台が決まった草なぎ剛。今度の作品はフェデリコ・フェリーニ監督の不朽の名画「道」を舞台化した音楽劇だ。同作に臨むにあたり「月刊ザテレビジョン」の連載「お気楽大好き!」(10月号発売中)で今の心境を率直に語った。その一部を紹介。
始まって5分で心つかまれ、引き込まれた
12月に東京・日生劇場で上演される音楽劇「道」に主演することになりました。原作はイタリアの巨匠・フェデリコ・フェリーニ監督の名作。演出は世界的に活躍するデヴィッド・ルヴォー氏。舞台のお話をいただいたときは、正直、ビックリしましたよ。何で僕に声を掛けてくれたのかなと思って。
でも興味はすごく湧いた。僕は「道」という作品を知らなかったから、すぐに映画を見ましたよ。素晴らしい映画でね。映画のパッケージ、モノクロの古いフィルムに刻まれたトーン、出てくる風景や男たちのいでたちから乗っているバイクまで、50年代の僕の好きなものが詰まっている感じがして。役者のエネルギーと登場人物たちの生きざまに、始まって5分で心つかまれ、引き込まれました。
この役者は何だと。
物語は、主人公の旅芸人ザンパノが、純粋無垢な女性ジェルソミーナと一緒に旅をするという話。僕が演じるザンパノはぶっきらぼうでワガママ、毎晩違う女性を抱いてるようなめちゃくちゃな男で。そんなザンパノのことがジェルソミーナは好きで、実はザンパノも彼女のことが好きなんだけど、自分でもその気持ちに気付いてないし、表現なんてもちろんできない。ザンパノによって、どんどん彼女は傷ついていく。でも、どこか感じるところがあって、ザンパノについてきてはくれるんだけど…。彼の切なさとか、どうしようもなく不器用な姿を見ていると、もっとうまく生きられないのかなと、もどかしくもなる。最後、ザンパノが海辺で絶望しながら崩れ落ちてしまうんだけど、あそこの彼のアップを見て、僕はものすごく震えました。この役者は何だと。それを舞台で僕はどう演じるのかなと。全身全霊を懸けてこの役に挑んでいかなければと思っています。