ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第114回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞 受賞インタビュー

撮影=阿部岳人

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」

義時の人生を表現しきった小栗旬さんは、やはりすごかった(制作統括・清水拓哉氏)

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で作品賞を獲得した感想を教えてください。

制作統括・清水拓哉氏:ありがとうございます。ドラマアカデミー賞は読者投票部門があるので、視聴者の皆さんにもそれだけ好評をいただけたと思うと、改めてうれしいですね。
制作統括・尾崎裕和氏:作品賞が取れたのはすごくうれしいですね。このドラマは幅広い層に見ていただき、普段はドラマを見ない人からも「見ていて楽しかったよ。1年間ありがとう」という言葉をもらったりしました。作品がいろんな人に愛されていたんだなと実感します。

清水氏:放送中はTwitterなどでも、うれしい感想が多かったですし、民放の番組でも取り上げていただくことが多く、人気の広がりを感じていました。


主人公の北条義時を演じた小栗旬さんへの評価も高く、主演男優賞部門でも上位でした。小栗さんの演技はいかがでしたか?

尾崎氏:やはり1年間、義時を演じ通し、序盤の伊豆の若者の小四郎に過ぎなかったところから、最後、権力の頂点に立つまでの変化が素晴らしかったですね。それこそが大河ドラマの醍醐味(だいごみ)で、ラストシーンを見た後に第1話を見返してくれた人は、登場時の小栗さんはこんな感じだったと思うと胸がキュンとしたのではないでしょうか。

清水氏:終盤はもう執権・義時でしかないオーラがあり、みんなで小栗さんにしがみつくように撮影していました。最終話回は三谷幸喜さんがすごく衝撃的な台本を書いてくれたので、これはぜひ見てもらいたいと思って宣伝した結果、ハードルが上がってしまったんですが、そんな中、小栗さんと政子役の小池栄子さんが見事に着地を決めてくれました。難易度の高いシーンなのに、政子と義時のやり取りを誤解されないよう、かつ嫌な後味を残さずに演じてくれましたね。

私は現場で義時がのたうち回ってパタンと倒れる小栗さんの体の動きを伴った音を生で聞いていたので、胸が締めつけられ、今でもその音が耳から離れないぐらいです。そうして義時の人生や鎌倉時代のシビアな歴史というものを表現しきった小栗さんは、やはりすごかった。クランクアップ間近、最後の週では義時が毒を盛られ弱っていく状態を演じたので、その週は断食したそうで、ご本人いわく「付け焼き刃だけど」ということでしたが、見るからに悲相感が漂っていてリアルでしたね。


北条政子を演じた小池栄子さんはいかがでしたか?

清水氏:承久の乱の前に政子が「鎌倉殿の恩は山より高く、海より深い」という有名な演説をする。小池さんにとっても、それを演じるプレッシャーはきっとすごかったはず。しかし、説得力のある素晴らしい演技でしたし、現場でたくさん入ってもらった御家人役のエキストラの人たちの顔が、政子の一言でガラッと変わったのが、見ていて面白かったですね。まるで本当に鼓舞されているような…。

また、小池さんは「鎌倉殿―」のムードメーカー。前半は頼朝役の大泉洋さんと、後半は泰時役の坂口健太郎さんと一緒に、現場を盛り上げてくれました。


「新選組!」(2004年)、「真田丸」(2016年)に続いて大河ドラマ3作目となった三谷幸喜さんは脚本賞を受賞しました。

清水氏:承久の乱の政子の演説についてもそうですが、三谷さんは、有名な歴史とされていることをそのままやらずに、なぜそう伝わっているのかということを考える。史実と違うなら、何か間違って伝わった理由があるはずだという…。それがドラマにある種の強度を生むんですね。

例えば、義経(菅田将暉)が鵯(ひよどり)越えで崖を駆け下りたというような歴史劇として期待されている有名なエピソードには言及し、「実はこういうことだったんじゃないか」と見せていく。そのアプローチがとても面白く、大河ドラマの作家として得難い人だなと改めて思いました。

尾崎氏:今回、女性の描き方でも評価されましたが、そこは三谷さんもすごく意識されて、台本打ち合わせで女性スタッフに意見を聞いたりされていましたね。

清水氏:政子や八重(新垣結衣)が男性にとって都合良い女性になっていないか。頼朝(大泉洋)というずるい男を好きになってしまうだけの人物ではないので、そこは三谷さんも意識していましたね。だから、序盤で八重が頼朝のために矢を放つところは格好良かったし、彼女たちの主体性を大事にして書いてくれました。

義時の三番目妻“のえ”(菊地凛子)が登場したとき、「きのこ、大好き」とかわいく言っておきながら実はラストで嫌いだとぶちまける。「これは女性視聴者から嫌われるんじゃないか」と心配になって女性スタッフに聞いたら「最高」という答えで「オッケーなんだ」と安心したことも…。権謀術数を巡らす“りく”(宮沢りえ)だって男性なら普通のことをしているだけ。悪女と言われようが、ずけずけと政治の場に食い込んでいく“りく”って魅力的でしたよね。


連続テレビ小説「エール」(2020年NHK総合ほか)で監督賞を受賞した吉田照幸監督がチーフでしたが、演出はいかがでしたか?

清水氏:吉田監督にチーフをお願いしたのは、映像的な本格感を出してほしいと思ったから。技術的な知識があり、引き出しが多い人ですが、単純にドラマのルックが格好いいだけじゃなく、シーンの核をきちんと切り取り、物語をきちんと伝える画(え)を撮ってくれる監督です。実際に彼の巧みな演出に役者さんたちも引き込まれていきましたね。度胸もあって、時代劇を1本も撮ったこともなければ、もちろん大河ドラマの経験もないのに、経験豊かなスタッフに囲まれて堂々たるものでした。


最終回、三谷さんの台本はセリフを並べてあるのみで、ト書きはほとんど書いていないですね。義時に別れを告げられた“のえ”が最後に片膝を立ててすごんだり、ラストで政子が義時の薬を持ったまま後ずさったりしたのは、吉田監督の演出だったのでしょうか。

清水氏:もちろん役者さんからアイデアが出る場合もあって、吉田監督はそれを上手に採り入れていましたが、「それは違う」と思ったら、はっきり言っていました。“のえ”が義時の布団にまで上がり込んで片膝を立てるというのは、菊地さんは「ここまでやっていいのかしら」と戸惑っていましたが、監督が「もう、やっちゃいましょう」と言っていましたね。

尾崎氏:僕は「エール」など、吉田監督のほとんどの作品でご一緒していますが、周りに慕われるし頼りになる。また、海外ドラマを含めめちゃくちゃいろいろな作品を見ているだけに、世界に通じるものを作りたいというか、大河ドラマのファンだけでなくもっと幅広い層にクオリティーの高い映像を見せたいという思いは強くある人だと思います。


「鎌倉殿―」は中世日本の戦いと血みどろの歴史を描きましたが、放送開始後にロシアによるウクライナ侵攻が起き、そういった世界状況とリンクしたのでは?

清水氏:大河ドラマは数年かけて準備するので、偶然でしかないのですが、三谷さんの作る歴史劇はすごくしっかりしたものなので、多面的な見方ができ、現在とのリンクも感じていただけたのかなという気はします。けれど、まさか放送中にヨーロッパで戦争が起こるとは思っていなかったですね。だから、800年も前の源平合戦で子供まで亡くなってしまうという展開は、通常と違った見え方をしたかもしれません。そこがフィクションの怖いところですね。

(取材・文=小田慶子)
鎌倉殿の13人

鎌倉殿の13人

小栗旬主演で、武士の世を盤石にした男・北条義時が頂点に上り詰めていく姿をドラマ化。鎌倉幕府将軍“鎌倉殿”源頼朝(大泉洋)を支えた13人の家臣団が、頼朝の死後繰り広げる激しい内部抗争、権力の座を巡る駆け引きを描く。脚本は大河ドラマ「新選組!」(2004年)や大河ドラマ「真田丸」(2016年)を手掛けた三谷幸喜が担当する。

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