ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第114回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞 受賞インタビュー

撮影=阿部岳人

風間太樹、髙野舞、品田俊介

登場人物一人一人の表情が力強く映るよう意識しました(風間太樹監督)

「silent」で監督賞を獲得した感想を教えてください。

風間太樹監督:ありがとうございます。演出に着眼して頂けたことをうれしく思いながら、同時に映像表現への妥協なき姿勢を貫いて下さったスタッフと、「silent」の世界に生きた全ての俳優に感謝します。そのエネルギーと、寄り添い合う気概に助けられ、連続ドラマ11話を描き切ることが出来ました。

髙野舞監督:この度は光栄な賞を頂き大変うれしく思います。私の役割は、風間監督はじめとするスタッフ・キャストが1、2話で作りあげた「silent」の世界観を受け取り、寄り添い、つなげる、ことでした。監督賞は作品に関わった全ての方から頂いたご褒美のような気がしています。


「余白のある映像がとても美しく物語に没入できた」「世界観が素晴らしかった」という評価が寄せられています。

風間監督:生方美久さんが書いた脚本そのものに魅力があったし、川口春奈さんをはじめとするキャストも一緒にお芝居を考えるのが楽しみなメンバーがそろっていたので、まずはその良さを生かせるように。それが前提としてある上で、画(え)の空気感は、静謐(せいひつ)で、クリアで、湿度があって、いつも登場人物一人一人の表情が力強く映るよう意識しました。

髙野監督:私は3話から演出に関わったため、魅力ある脚本がどのようにして立体になっていくかを間近で見させていただいていました。その過程から作品の質感や空気を肌で感じて、「silent」の世界観を自分の中に徐々に落とし込んでいくようにしました。


風間さんと言えば、「うきわ ―友達以上、不倫未満―」(2021年テレビ東京系)もそうだったように、青みがかった透明感のある映像が印象的です。今回はカメラなど、どんな機材を使いましたか。

風間監督:主流のシネマカメラと単焦点レンズです。色に関してはグレーディングによる演出はあると思いますが、本作のトーンをけん引しているのは現場の照明や構図、その画面構成で、撮影監督、照明スタッフの技術は素晴らしかったと思います。特に青を際立たせるという考えはありませんでした。


ただ、紬たちの衣装も青色のものが多く、手紙や付箋の色、舞台となった小田急線世田谷代田駅の看板も青でした。

風間監督:「silent」のテーマカラーが青ということではありません。キャラクターの性質やシーンに込めた感情を表現するための色彩があります。それを選び取っていたら無意識にブルーが多くなっていったということだと思います。

髙野監督:風間監督が表現する映像を毎シーン必ず確認し、物語としていただいたバトンを次につなげていったら、私もおのずとブルーが増えていきましたね。

風間監督:打ち合わせで「紬のテーマカラーってなんだろう」となって、青ですねという話はしました。シチュエーションや誰と一緒にいるかによって画面の中の色彩が不安定になるので、その都度最適な色を選んでいました。髙野さんの演出回で紬にスカーレットの服をセレクトしていたのも、色にメリハリが出て、全体を通して見たときに効いていたと思います。


主演女優賞を受賞した川口春奈さんの演技はいかがでしたか?

風間監督:川口さんは、ありのままの自分が受け取ったものを大切に差し出してくれていたように思います。うれしくて、楽しくて、でも寂しくて、つらくて、紬の感情には複雑なシグナルが無数にありました。自分の心の内側から生まれ出てくる気持ちにうそをつかない姿勢で、作品における自分の役割を誰よりも意識しながらも、感覚的に躍動する。格好つけずに、無防備なまま力強く立っている。それが画になってしまう人です。

髙野監督:「格好つけず無防備なまま」その通りだと思います。すごくそれが清々しくて逆にカッコイイ! お芝居に関して、とても地力のある方なのはもちろんですが、感覚的なものをとても大事にされ、瞬発力を感じます。だからこそ、その世界にリアルに生きている人に見える。

風間監督:そうですね。人や環境、空間に「反応」するということを大切にしている方だと思います。


助演男優賞を受賞した目黒蓮さんはいかがでしたか?

風間監督:目黒くんは役に丁寧に向き合う人。彼自身の中で想という人物の感覚が積み上がっていくのを見つめ続けた撮影でした。その感覚に委ねたいと思えるほど、目黒くんが想に夢中だったんです。コミュニケーションは多い方で、微細な気付きも共有してくれました。

髙野監督:とても真摯(しんし)な方なので、こちらが差し出すものに誠実に耳を傾けて下さいました。受け取った言葉をご自身の中でそしゃくし、体の中に染み込ませていく。そして想として得る感覚も共有してくれます。決して器用なタイプではないかもしれませんが、その丁寧な作業が必ずお芝居に現れていましたね。

風間監督:そうやって相談しつつも、彼の中に揺るぎないものがある。俳優としてはまだこれから伸びる人だと思うけれど、自分の角度と視点をしっかり持っているから強いですよね。人を引きつける特別さは確実にあるのに、Snow Manの目黒蓮としての“スター性“を消せたりもする。

髙野監督:そうですね。私たちも、役として彼と向き合っていると、彼がアイドルだということに自然と意識がいかなくなりました。

風間監督:目黒くんは手話の上達も早く、習得するまでの時間がどんどん短くなっていきましたよね。

髙野監督:本当にすごかった。気付くと、手話の先生たちと通訳なしで会話できるほどになっていました。


助演女優賞を受賞した夏帆さんはいかがでしたか?

髙野監督:夏帆さんは、私の担当回での出演分量が多かったですね。役柄的に全編手話でのお芝居になりますから大変苦労されたと思いますが、人並み外れた集中力がある役者だと感じました。良い意味で、正解を持って現場に臨まず、疑う目も持ち合わせながら役に向き合っていました。とても素直で誠実にお芝居されていて、それが私の想像を超えていくこともあり、率直に撮影していて楽しいと幾度も思わせてもらいました。


今回寄せられた意見に「最終話のラストシーン、高校時代の教室で想が紬に何かをささやく場面は2人の影が何回もキスしているように見えます」というのがあります。これも演出意図でしたか?

風間監督:ご想像にお任せします。丁寧に見て頂きありがとうございます。

(取材・文=小田慶子)
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川口春奈主演の切なくも温かいラブストーリー。8年前に、一生懸けて愛したいと思えた恋人・想(目黒蓮)との突然の別れを経験した紬(川口)は、ある日、街で想を見掛け、再び彼の存在を意識するように。想を捜し始めた紬は、彼が若年発症型両側性感音難聴を患い、聴力をほとんど失っていることを知る。

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