ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第114回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演女優賞 受賞インタビュー

撮影=阿部岳人

川口春奈

感じたままに演じて芝居の振り幅が広がった

「silent」で初の主演女優賞を獲得しました。受賞の感想を教えてください。

ありがとうございます。「silent」は恋愛だけでなく、誰もが経験するような人間関係の苦しさやもどかしさを描き、私の演じた紬やその周りの人が人生の岐路に立つ瞬間の切なさのようなものが、見ている人たちに届いたからこそ、評価してもらえたのかなと思っています。共演の皆さん、脚本の生方美久さん、監督さんたち、プロデューサーの村瀬健さん、スタッフの皆さんと一緒にチームでいただいた賞だと思います。

手話での演技はどうでしたか?

紬は手話の初心者ですし、台本がギリギリのスケジュールで届くこともあったので、現場で撮影前に練習してすぐ手話の演技という場合も。第7話で奈々(夏帆)に「一気に話しますね」と手話をするシーンはかなりボリュームがあったので、いつもよりゆとりを持って準備しました。手話はやっぱり難しいんですけど、とても奥の深いコミュニケーションで、初心者と上達した人では表現の仕方が違う。その差が伝わればいいなと思いながら演じていました。


投票した人からは「川口さんの演技がとても自然で泣き方も美しく、感動させられた」という意見が寄せられました。

私は「こう見せよう」という計算ができないタイプで、本当に感じたままに演じるので、現場で初めて役として切なかったり悲しかったりという表情になるんです。このドラマではこれまで自分でも見たことのない表情をしていて、振り幅が広くなったと感じることが多々ありました。それも監督さんたちのおかげで、クランクアップのとき、風間太樹監督が「川口さんのいろんな表情を撮ることができて、うれしかった」と言ってくださったんですが、本当に感謝しています。


川口さんの演技に引き込まれたという感想が多いのは、第1話で紬と想が8年ぶりに再会する場面。紬は想が聴力を失ったことを突然知り、衝撃を受けます。

紬のとっさに理解ができない中での戸惑いとか、いろんな感情が出てくる場面でした。心の整理のついていない状態を表現するのは難しかったです。


その後、紬は湊斗(鈴鹿央士)と付き合っていたのに、想と向き合うために別れてしまいました。そこで紬が葛藤するさまを演じるのは難しかったのでは?

あのときの紬のように決断に迫られる瞬間って誰にでも訪れると思うんです。だから、皆さんに理解してもらえるシチュエーションではあったかな、と。大好きだった湊斗との別れというものを1話をかけて丁寧に描き、紬が成長するのを見せられたので、私自身、紬の背中を押すような感覚にもなりました。


やはり紬と想は結ばれるべく運命づけられた2人だったのでしょうか。

よく運命とかね、必然とか言いますけど、そうではないと思います。2人の関係がすごくロマンチックだったかと聞かれたら、そんなことはない。離れていた8年間で変わったことがあり、紬と想の間にはいろんな壁が立ちはだかり、ちょっと進展したと思ったらちょっと離れてというように、少しずつ近づいていくところがリアルで、分かる分かると思っていました。


やはり生方さんの脚本がすばらしかったですね。生方さんは紬という役を川口さんに当て書きしていたのでは?

そうみたいです。生方さんが私のYouTubeチャンネルなどを見てくださって、そこで見た私のキャラが役柄に盛り込まれていたからこそ、紬のセリフがナチュラルに言えたのかなと思いますね。すごく言いやすいセリフでした。やはり脚本の力って大きい。その一方で、私は紬であって紬ではないので、相手のために真っすぐ頑張ることができる紬をすごいと思っていました。私にはとてもそんな度量はないです(笑)。


助演男優賞を獲得した目黒蓮さんは、どんな俳優だと思いましたか。

目黒さんはとにかく、想そのもの。ドラマオリジナルのストーリーで、私だけでなく、それぞれの役者さんについて生方さんが思い描くエッセンスを盛り込んでいるだけあって、目黒さんのまとっているオーラみたいなものが想とリンクする部分が多いなと感じました。現場でも自分の世界に没入し、手話も含めて一生懸命に演じている姿に心を打たれました。


主題歌であるOfficial髭男dismの「Subtitle」がドラマソング賞を受賞しました。

クランクイン当初、台本が数話分しかない状態で、あそこまでの世界観を作ってくださって、このドラマをより深いところに持っていってくれた大切な曲です。本当にいまだに聴くと、いろんな思い出がフラッシュバックしますね。歌詞を読めば読むほど深くて、想の歌にも聞こえるし、湊斗の歌にも聞こえる。アーティストの方ってすごいなと改めて思いました。


川口さんは10代の頃から連続ドラマに主演してきましたが、今回、「silent」で高く評価され、俳優として一つキャリアを達成したという実感はありますか?

そうですね。あまり自分のキャリアがどうとかは意識していないですし、これまで出たどの作品にもすごく愛情があります。でも、今回は頑張って取り組んだ作品がこうして評価され、本当にシンプルにうれしいなと思います。報われたかという意味で言うと、頑張ってきて良かったなという気持ちですね。

(取材・文=小田慶子)
silent

silent

川口春奈主演の切なくも温かいラブストーリー。8年前に、一生懸けて愛したいと思えた恋人・想(目黒蓮)との突然の別れを経験した紬(川口)は、ある日、街で想を見掛け、再び彼の存在を意識するように。想を捜し始めた紬は、彼が若年発症型両側性感音難聴を患い、聴力をほとんど失っていることを知る。

第114回ザテレビジョンドラマアカデミー賞受賞インタビュー一覧

【PR】お知らせ