大人になると、どうしても現実なことを考える
――連載の2年間、中村さんの日々への思いがネタや書き方に直接的な影響を及ぼしていたということですか?
そうですね。連載時には毎回“色”が変わるものになればと思っていました。連載ごとに何を真ん中のネタにもってくるのかもそうですし、この2年間は僕にとっていろいろと目まぐるしい時期だったので、それを含めての変化を楽しんでいただければと思い、本としてまとめるときにも時系列で並べることにしました。
――その中で「少年のころの思いをなくしてはいないか」という自問が何回か出てきたのですが、中村さんの中で変らないものと変わっていきたいものとは?
僕は自分に悩みがあるときに、極力シンプルに考える作業をするんですけど、その最たるものが「少年のころの思い」。それこそ、子どもの頃は何も考えずに楽しんでいたし、素直に「これがほしい」と自分の欲望のままに発していたと思うんですよね。でも、大人になると、どうしても現実なことを考えるし、天秤にかけてしまうところもありますね。それが大人社会で経験を積むということなんだと思いますが、最終的には「すっきり」と言い張れるぐらいの純粋さが強い気がしていて。
――確かに子ども時代の無邪気な気ままさを懐かしく思うことがあります。
今、僕が面白いと思うのは、役者はいろんなものを総動員してもの作りをしていく仕事じゃないですか。そのときに計画的に演出したものよりも「こうしちゃった」「こうなっちゃった」というものの方がいろんなものを打破する力が強く、シンプルに楽しいんですよね。そのためにも純粋さがあった方がいいと思うので、「少年のころの思いをなくしてはいないか」と見つめ直すようにしています。