ハロプロの財産をOG流でアップデート
観客にとって馴染み深いハロプロ曲が一番に盛り上がるのは当然だが、「M-line Special」は決して懐メロ大会と揶揄されるものではない。ステージに立ち続けている“現役OG”だからこそのクオリティー、歌唱の圧力は半端なく、鈴木がパワフルに空気を震わせれば、田中は突き抜けるような歌声を響かせる。
グループ時代を調和とするなら、ここでの彼女たちは“個”を前面に出し、非常に攻撃的だ。それでいてぶつかり合う先で、新たな楽曲表現を作り出す。過去のハロプロ曲がメインであるのには違いないが、楽曲は受け継がれる財産。それをまた今、OGたちがアップデートさせているのだ。
最後になるが、「M-line」とはハロプロ卒業メンバーが所属するファンクラブ「M-line club」のことを指す。おそらくこの「M-line Special」は、個別の単独公演が打ちにくいコロナ禍の現状で模索された合同コンサートなのだろう(昨年、単独公演は全て中止された)。単独公演が待ち遠しい気持ちはもちろんあるものの、グループパフォーマンスの、しかもこのメンバー構成での楽しさは間違いなく別格だ。
今のハロプロはグループが5つ、メンバーは総勢58人(記事時点)という大所帯になっている。それだけに今後、卒業後は「M-line club」に移り、ライブステージを継続するメンバーが増えていくだろう。「M-line club」がOGファンクラブという枠を超え、ハロプロのような大きなプロジェクトになり、ソロ活動と「M-line Special」が両輪されていけば非常に面白くなるはずだ。
現在、「M-line Special」は8月公演まで発表されており、これまでゲスト出演だった小片リサも主軸メンバーとしての本格参加が決まっている。地方公演も多く組まれているので、今のハロプロファンも、かつてのハロプロファンも、機会があればぜひ一度は足を運んでみてほしい。
※「M-line Special 2021~Make a Wish!~」は政府ガイドラインに沿った感染症対策の下に行われ、立席禁止、マスク着用、声出し禁止となっています。
文:鈴木康道
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