怪異を際立たせるために、作品の中の「日常」を丁寧に描く
――「明晰夢」は本当に文太さんの実体験をもとにして描かれているのでしょうか？
はい、そうです。作中でも書いたように中学2年生の頃に見た夢を割と忠実に再現しています。ただ、漫画にするにあたり多少省いたこともあります。例えば実体験では「本の文字が読めない」の後に「教室のテレビを点けてニュースを流すが上手く聞き取れない」というシーンがあったんですが、絵で表現するのが困難なことと、話のテンポ感などを考慮して割愛しています。
――「明晰夢」の中で特に印象に残っているシーンを教えてください。
とにかくクラスメートが「バグった」瞬間ですね。明晰夢を見るのはこの時が初めてではないので、夢特有の荒唐無稽な展開にはある程度慣れていたつもりだったんですが、一瞬にして世界が狂ったようなあの感覚はかなり気持ち悪かったです。
―― この作品以外でもホラー作品を投稿していらっしゃいますが、ご自身はいわゆる「霊感」があると考えていらっしゃいますか？
よく聞かれるんですけど僕はオカルト懐疑派です。大学で(落ちこぼれでしたが)物理を専攻していたこともあり、「この世」は思った以上に厳密なルールに則って動いていて、怪異やオカルトの入り込む余地がほとんど無いことを知っています。その一方で、体験したことは紛れもなく主観的な事実で、この2つのギャップがどこから来るのか、そこに興味があります。今のところ個人的な見解としては「全部自分の脳のバグ説」が優勢なので懐疑派ですが、完全な否定派でもありません。同じ怪異を同時に複数人で体験するようなことがあれば、考えを変えると思います。そしていつかそうなって欲しいと、どこかで望んでもいます。
―― そもそもSNSにホラー作品を投稿するようになったきっかけを教えてください。
最初は完全に思い付きでした。「夏の終わりにせっかくだからホラーでも…」とそんな感じです。もともとホラーは漫画・小説・映画、なんでも大好きだったのでとても楽しく描けました。以前投稿した「台所の姉」が思った以上にバズって、「ああ、自分の体験談って人からみると奇妙で面白いんだな」と再認識して他の話も描いてみようと思いました。
―― ホラーを描く際、タッチやテイストなどこだわっていることはありますか？
ホラー漫画って絵自体のインパクトで怖がらせるものも多いと思うんですが、古き良きジャパニーズホラーのように雰囲気や空気感で怖がらせられるように試行錯誤しています。自分の体験談がどれも絵的にそんな派手じゃないのでそうせざるを得ないという部分もありますが…。あとは、怪異を際立たせるために「日常」の部分をいかにリアルに描くか、というのも意識しています。それは登場人物の表情や仕草だったり、背景や小物の描写だったりするんですが、毎度毎度頭を悩ませながら怪異描写の数倍の労力を使っています…。
―― 作品を読んでくれているファンやユーザーへメッセージがあればお願いします。
いつも楽しみにしてくださってる方には本当に感謝しています。感想やコメントもとても励みになります。なかなか全部にお返事することはできないんですが、本当の本当に全部読んでいます。ありがとうございます。描くの遅くて頻繁には更新できないんですが、まだまだネタはあるのでのんびり次回作をお待ちいただければ幸いです。
取材協力：文太(@bunta_50)さん
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
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