良くも悪くも空気が読めない炭治郎
前述したように炭治郎はとても思いやりのある、素直で真面目な少年だ。一方で、真面目過ぎる、正直過ぎる性格がちょっと困ったことにもなっている。オマケに超が付くド天然なものだから、悪意なく相手の心にダメージを与えてしまうこともしばしばある。伊之助と初対面になった「鼓屋敷編」は、そんな炭治郎の空気の読めなさが遺憾なく発揮されたエピソードであった。
「こぢんまりしていて 色白でいいんじゃないかと思う!!」という、まるで女子への誉め言葉は伊之助の美少年過ぎる意外な素顔を見たときのこと。強さを誇示する伊之助にはほとんど挑発行為と言ってよく、埋葬の穴掘りを拒否されたときには、「傷が痛むからできないんだな?」と気の毒そうな表情と見当違いな思いやりで挑発してきた伊之助を逆に逆撫でする始末。救出した子どもたちからも、「ズレてる…ズレてる…」とKYぶりに困惑されていた。
物おじしない性格の炭治郎は上官である柱にも容赦なく、柱合会議ではお館様に口上を述べる風柱・不死川実弥に「知性も理性も全く無さそうだったのに すごいきちんと喋り出したぞ」と失礼極まるツッコミを。このとき押さえ付けられていたため心の中で留めたからいいものの、もし口に出していたら大惨事になっていたに違いない。ちなみに実弥はKY炭治郎のかなりの被害者で、きっと柄にもない好物を隠していたのだろう“おはぎ好き”を、よりにもよって毛嫌いしている冨岡義勇の前で暴露されるという憂き目にもあっている。
また、空気を読めないストレートさが人を救うときもあり、柱合会議後、蝶屋敷での栗花落カナヲとの一件はその意味で印象が強いところだ。自分の意志がなく、投げた銅貨の表裏でしか行動を決められなかった彼女をよそに、笑顔で話しかけ続けた炭治郎。「カナヲがこれから自分の声をよく聞くこと」「表が出たらカナヲは心のままに生きる」――そう叫んで投げた銅貨は、炭治郎の手の甲でしっかり表を見せていた。そして、カナヲは炭治郎が投げたそれをきゅっと両手で包み込む。カナヲの心に何か変化が生まれた瞬間で、その後、音柱・宇髄天元がアオイたちを連れ去ろうとしたときには「心のままに」という炭治郎の言葉を思い出し、宇髄の隊服にしがみつく自意識的行動を見せている。もし炭治郎が空気を読んでその場を離れてしまうような子だったら、カナヲは自分の心の声が聞こえないままだったかもしれない。
https://kimetsu.com/anime/
■花江夏樹公式Instagram
https://www.instagram.com/hanae_natsuki0626/
■鬼頭明里公式Instagram
https://www.instagram.com/akarikito1016/